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私が向けた最大限の笑顔に、高丘先輩は何故かきょとんとした表情を見せていた。その様子が何だかやけにおかしくって、思わず小さく噴き出してしまう。
――でも、高丘先輩が放った言葉で、私の笑顔は一瞬のうちに消え失せる。
「……やっぱり、そんな風に笑えるんだよな。向こうでも見せてくれてたし」
高丘先輩にとってみれば、あまり意識せずについつい口から漏れてしまったような言葉なのかもしれない。でも、私にとってその言葉は一種の地雷のようなものだった。
『やっぱり』――その言葉が、高丘先輩が言いたいことを如実に現している。
「あっ、いや……悪い。その、こんなこと言うつもりじゃなかったんだけど……」
私の表情の移り変わりに事態を察したのか、高丘先輩は慌てて弁解の言葉を投げかけてきていた。それに対して、私は軽く手で気にしてない素振りを見せるけど……内心、気にならないわけがない。
――きっと高丘先輩は、『何で私が学校だとこんなにも暗い表情をしているんだろう』と思ってその言葉を漏らしたんだ。
金網に寄りかかって、軽く空を見上げる。そして、突き刺すような眩しさの陽光を手で遮りながら、私はそっと話しだす。
「……私、学校が怖いんです。私にとってはクラスメイトも、先生たちも、みんな恐怖の対象なんです。でも、恐怖を感じるのが自分のせいだってことも……わかってはいるつもりなんです。私が、勝手に人見知りして、いつも一人孤立して、先生からも見放されて……」
「それって、クラスのみんなに……その、いじめられてるってこと?」
「い、いえ、そういうわけじゃないんです。……やっぱり、私が悪いんです」
「俺には――」
「えっ?」
突然変わった高丘先輩の声色に、私は思わず視線を高丘先輩に向けていた。その表情が、真剣で何だか軽く睨まれているように見える。
「――俺には、優莉のせいだとはとても思えないけどな。さっき優莉のクラスに行ったときの周りのやつらの反応は、あまりにも酷すぎるじゃないか」
「あ、あの、倫人さん?」
「――うん、絶対に優莉のせいなんかじゃない。『誰のせい』とか決めつけるのも、それはそれで良くないかもしれないけど、やっぱり少なくとも優莉のせいなんかじゃないよ。優莉は悪くない! うん、絶対そうだ!!」
軽く拳を握りながら、少し表情を緩めて自信満々に告げる高丘先輩。その言葉は、つぎはぎだらけの私の心に心地良く響く。
――そして、気が付くといつの間にか涙が頬をつたっていた。
「あ、あれ? 私……どうしたんだろ? すいません。……もぅ、何で涙なんて出てくるの?」
自分でも、どうして涙が溢れて止まらないのかよくわからなかった。
でも……少なくとも、この涙が悲しみによって発生したものでないことはわかる。
――だって今、こんなにも涙で滲んだ世界が輝いて見えるんだもん。




