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カフェMay'sと読書少女  作者: 深那 優
6.『はじめまして』と読書少女
34/117

6-4

 私が学校――私立隆山総合高等学校に着いたのは、丁度お昼休みの時間帯だった。あれこれ考えながらゆっくりと歩いて来た結果がこれだ。

 先に職員室に行って、先生に遅れてきたことを告げる。『体調不良』という言葉を使ったら、先生は何とも素っ気無く了承していた。

 ……多分、先生も私みたいな厄介な生徒とはあまり関わりたくないんだろう。

 自分のクラスの教室に着いても、周りのクラスメイトたちはチラっと一瞥するだけで、その後は何の反応も示さない。

 別に、何の驚きも無い。……いつものことだもん。

 教室の最後列の一番窓側が私の席。その周辺には、まるでそこだけ別の空間であるかのように誰も存在しない。

 私がそこにポツンと納まれば、いつもの昼休みの光景が出来上がる。

 私に近づこうとするクラスメイトなんて、いるはずがない。

 それは、いたって自然なこと。……だって、私自身が周りに人を寄せ付けないようなオーラを放っているんだから……きっと。

 クラスメイトたちの言葉や視線が怖い。だから、出来るだけ近づいてきてほしくない。それは、私自身が思っていること。

 ――いつも学校に居るときは、どうか何事もなく時間が過ぎ去ってほしいと願っているのだから。


 とても食事をとるような気分にはなれなくて、私は机に突っ伏してただただ時間が経つのを待つ。こうして机に突っ伏していれば、クラスメイトたちの姿が視界に映ることもない。

 普段はいつも持ち歩いている文庫本を読んでいるけど、今日はとても文庫本を読む気にはなれなかった。

 ……どうしても、あの読書カフェで差し出された文庫本のことを思い出してしまうから。

 大丈夫。こうして机に突っ伏していれば、勝手に時間は過ぎていく。そしてそのうち午後の授業が始まって、ショートホームルームという名の儀式が終われば学校から解放される。

 ――それまでの我慢だ。

 机に突っ伏した状態のまま、私は何でわざわざ学校に来たのかを改めて考える。……そうだ、学校に来れば高丘先輩に会えるかもしれないと思って、恐怖を振り切って来たんだ。

 でも……やっぱり、いざ学校に来てしまうとどうしても恐怖が先行してしまう。

 高丘先輩が居れば耐えられるかもしれないと思ったけど、自分から高丘先輩に会いに行くことなんて、とてもじゃないけど出来そうにない。

 私が知っているのは、高丘先輩が同じ学校の二年生であるということだけ。それこそ、どこのクラスかも知らない状態。

 先輩たちに高丘先輩のいるクラスを聞いて回るだなんてこと、私に出来るわけがないよ。

 私の顔を支える机に向かって、周りには聞こえないように小さくため息を吐く。

 自然とまぶたの裏が無限のスクリーンとなって、向こうの世界での出来事を映し出していた。


 ――逃げる私のことを追いかけてくる高丘先輩。

 ――何だか不安そうな表情を見せる高丘先輩。

 ――とても凛々しい表情を見せる高丘先輩。

 それに、そっと私に微笑みかける高丘――。



「――水上さん」

「は、はいっ!」



 突然掛けられた言葉に、私は驚きのあまりガタッと椅子を鳴らしながら顔を無理やり起こしていた。

 声を掛けてきたのは、クラスメイトの女子生徒。当然、これまでまともに話をしたことなんてない人……なはずなのに、何故私に話しかけてきたんだろう。

 そう思いながら、何とかそのクラスメイトに対して首を傾げる仕草を見せると、そのクラスメイトは私に視線を向けたまま背後にある教室の入り口付近を指差した。

 そのクラスメイトの鋭い視線に、私は慌てて指差された教室の入り口付近に視線を移す。

 すると、そこには――。



「――優莉、やっと見つけたよ」

「倫人……さん」



 ――何だか違和感を感じてしまう、隆総の制服を着た高丘先輩の笑顔がそこにあった。


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