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そんな私の様子を見た高丘先輩は、いきなりの涙に焦って何も声を出せないでいた。その代わり、アレン様が申し訳なさそうに声を掛けてくる。
「……すまない。何やら、魔物にも襲われたと聞いたが。いきなりのことで気も動転してしまうだろうな。だが、安心して欲しい。同じザイウェンに住む民を無下に扱うことは絶対にしない。それこそ、リントの友人となれば尚のことな」
「アレン様……。それでしたら、一つお願いしたいことがあるのですが」
「何だ? ……言ってみろリント」
「それでは失礼して。優莉は今、行き場のない状態にあります。……私がアレン様に出会った時のように、どうか優莉を砦に置いてあげてくれないでしょうか」
高丘先輩はそう言うと、アレン様に深々と頭を下げていた。その様子に、私も慌てて頭を下げる。一向に涙が止まらない状態なのが、何だかとても情けないけど。
そして、暫くすると、肩に温かな感触が。……見ると、アレン様が私と高丘先輩の肩に手を添えて微笑んでいた。
「心配することはない。言われずとも、そのつもりだ。……ステラ、部屋に余裕はあるか?」
「えっと……完全に空いている部屋はありませんが、私の部屋で良ければ」
「そうか。……というわけだが、ステラと同じ部屋でも良いか?」
「は、はい! もちろん大丈夫です!!」
「よし、ならば君――ユーリもこれからは我らの仲間だ。ただ、周りの者に示しを付ける為にも、何か出来ることを手伝ってもらいたい」
「出来ること……ですか?」
「あぁ、何も戦地に繰り出させるようなことをするつもりはないから安心してくれ。そうだな……一般的な家事をしてもらうというのはどうだ? 砦に居る者は基本的に自分のことは自分でしているが、見回りや偵察でどうしても家事に手が及ばないときもあるからな」
「その……何から何まで完璧にこなすことが出来るかはわかりませんが、それでも良ければ……」
「では、そういうことにしよう。なに、何かわからないことがあればステラに聞けば良い。ステラ、ユーリのこと、よろしく頼むぞ」
「はい! お任せ下さい!!」
「それでは、これからよろしく頼む。すぐには馴染めないかもしれないが、砦に居る者たちは皆信頼できる仲間だ。きっとユーリも、本当の意味での仲間になれるさ」
ステラさんが嬉しそうに元気良く答えると、アレン様は私に向かってそう言いながら笑う。
その姿に、私は改めてこのアレン様が皆に慕われているんだろうなと実感する。そう感じさせるオーラみたいなものが、このアレン様にはある気がする。
「では、後のことは頼むぞ。私はこれから定例会議に出席するから、何か用がある時は会議室の方に来てくれ」
アレン様は、高丘先輩とステラさんにそう言うと、颯爽とドアを開け部屋を出てい――こうとしたが、ドアに手を触れたまま立ち止まると、振り向いて高丘先輩に声を掛ける。
「――そうだ、ところでリント」
「はい、何か?」
そして、改めて高丘先輩に近づくと、何やらそっと耳打ちをしている様子。
……でも、その耳打ちはあまり意味がなかったようで、私はしっかりとその言葉の内容を聞き取れていた。
「――あまりユーリが可愛いからって、すぐに手を出すのは止めておけよ。ただでさえ気が動転してるみたいなんだ。もしその気があるなら……タイミングを見誤るなよ」
その耳打ちに、慌ててアレン様から飛び退いて焦っている高丘先輩。そして、その様子に笑いだすアレン様とステラさん。
な、何だか、アレン様の性格がいまいち掴めないよ……。




