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「御苦労だったな、リント。それにステラも、よくリントをサポートしてくれた」
私の目の前で、銀色に煌めく鎧を着た男性が高丘先輩とステラさんに向けてそんな言葉を投げ掛けていた。
その、髭を蓄えた顔に穏やかな微笑みを湛える壮年の男性――この人が、あの『アレン様』だ。
アレン様に対して、高丘先輩とステラさんはスッと腰を落として敬意を表している。
これは……私もした方が良いのかな?
自然にそんな行動を起こしている高丘先輩とステラさんに、私は自分の取るべき行動なのかどうかわからずオロオロとしてしまう。
その様子を見たアレン様は、手で高丘先輩とステラさんに何やら合図をして二人の屈んだ体勢を解く。そしてそれを確認すると、微笑みを湛えたままそっと私に近づいてきた。
「はじめまして……と言った方が良いだろうな。私はザイウェン騎士団『白銀の盾』副団長、アレンだ。先刻は驚かせてしまったようで申し訳なかったな」
「い、いえ、その……私の方こそいきなり逃げ出したりしちゃって、すいませんでした……」
その言葉に、私はこの世界に来てすぐの出来事を想起する。
この世界で、初めて私に声を掛けてきた人。……今思えば、その声は明らかに私のことを心配してくれている声色をしていた。
それなのに、私はただただ恐怖の感情に襲われたまま、その場から逃げ出してしまった……。
そんな、こっちこそ申し訳ないことをしてしまったというのに、アレン様は私に対して謝ってくれている。
――それをしなければならないのは、きっと私の方なはずなのに。
私がとにかく平謝りしていると、高丘先輩が助け船を出してくれる。
「アレン様、彼女は優莉といいます。私と同郷の者でして……。ただ、事情があって故郷を離れていたようで」
「そうか、リントと同郷の者か……。リントの知り合いなのか?」
「いえ、そう言うわけでは。……ですが、同郷の者で歳も近いから話も合う。――今はもう、私にとっては『知り合い』ではなく『友人』と言えます」
アレン様との会話の中に出てきた、高丘先輩のその言葉。
――『知り合い』ではなく『友人』と言えます。
どこか誇らしげに答えていたその言葉が、何だかとても……身に沁みた。多分、嬉しかった……んだと思う。
高丘先輩にしてみたら、大して意識せずに出てきた言葉なのかもしれない。もしかしたら、話を上手く通すためだけの言葉なのかもしれない。
でも、私にとってみれば、『友人』という言葉はとても大きなものなんだ。
高校に入学してから、誰一人として『友人』と呼べる人が出来ていなかった私にとってみれば。
だから……なのかもしれない。
――気がつけば私は、瞳から流れる涙で視界を滲ませていた。




