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高丘先輩の口から出た『アレン様』という名前。その名前は、これまで度々耳にしていた名前だった。
あの、おそらく私がこの世界に来て初めて声を掛けてきた人。
それに、ステラさんも『アレン様』という名前を口にしていた。その事実だけでも、その『アレン様』が高丘先輩やステラさん、そして私にとっても重要な人物であることが想像できる。
高丘先輩は、その『アレン様』について、色々と教えてくれた。
ザイウェン国の『白銀の盾』っていう騎士団の副団長を務めている人だということ。
マーブック地方の現状を知って、魔物から現地の人々を救う賛同者を募りつつプレストの砦までやってきたということ。
そして、プレストの砦にいる人にとっての君主であるということ。
「まぁ、アレン様について色々話したけど、実はほとんど後から砦の人に聞いた話なんだ。何せ、今話したことは全て俺がこの世界に来る前に起きていたことみたいだからね」
「そう……なんですか?」
言いながら、ふと私の脳裏に一つの疑問がよぎる。
もし、高丘先輩の言っていたことが全て高丘先輩自身がこの世界に来る前の出来事だったとするなら、いったい高丘先輩はどうやってこの砦の人たちの仲間になったんだろう?
『アレン様』がマーブック地方を魔物から救う賛同者を募っている時についていったというのなら、話はわかるんだけど……。
よぎった疑問を解くべく、私は高丘先輩に質問を投げかける。
「あの、それじゃあ高丘先輩はどうして砦に?」
すると、高丘先輩は私の顔を見て微笑みながら、その質問に答えてくれた。
「それはな、俺も優莉と同じように、見回りをしていたアレン様に発見されたからさ」
「えっ? 高丘先輩も?」
「はは、そんなに驚くようなことじゃないだろ? 俺だって、元はと言えば優莉と同じようにMay'sであの文庫本を読もうとして、気がついたらこの世界にいたんだから。まぁ、優莉とは違って俺はその時制服姿じゃなかったし、逃げだすんじゃなくてアレン様について行く道を選択したんだけど。――アレン様と共に、魔物を退治する道をな」
そう言いながら、おどけた表情を見せる高丘先輩。……これ、明らかにからかわれてるよね?
――でも、そんな高丘先輩は、次に放った言葉と共にその表情を真剣なものに変える。
「まぁ、そう言うわけで俺はこの砦に来て、剣の扱いを教えてもらいながら今に至るってわけなんだけど……。ここからが、俺にとっても優莉にとっても一番重要な話になると思う。俺たちが、これから何をしようとしているのか。それと、この世界と俺たちの世界――便宜上『現実世界』って言い方にするけど、その二つの世界の行き来について説明するよ。多少、俺の推論も混ざっちゃうと思うけどね」
正直これまでの説明は、一度で理解しろと言われてもそう簡単には頭の中に入ってくるものではなかった。
でも、それだけは……。これから高丘先輩が説明しようとしていることだけは、しっかりと記憶しておかなければいけない。
――きっとそれは、今の私にとって最も重要な情報なんだと思うから。




