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「じゃあ……とりあえず、わかる範囲で説明していくな。今俺たちがいる世界は『アステル』って呼ばれてる。そして、このプレストの砦がある国は『ザイウェン』。……ほら、この地図の東端の方に書いてあるだろ?」
高丘先輩はそう言いながら、背後を振り向いて壁に貼られている地図を指さす。
立ちあがって近づいて見ると、確かにその地図の東端の方にザイウェンという名前が記されていた。そして、その国境線に括られた中にプレストの名も見てとれる。
隣に移動した私がしっかりと地図を見ていることを確認した高丘先輩は、尚も視線を地図に向けたまま説明を続ける。
「それで、もっと範囲を狭めていくと、そのザイウェンの東端に位置するのが『マーブック地方』。プレストの砦があるのはそのマーブック地方だ。マーブック地方はザイウェンの中でも辺境の地みたいで、中々国の監視が行き届かない場所らしい。……で、その事実が今俺が置かれている境遇に繋がってくるんだ」
説明をしているうちに意識が移ったのか、高丘先輩は真剣な表情に戻っていた。その様子に、私も自然と真剣に高丘先輩の説明を聞く体勢に。
そうだよ……今は、とにかく今自分が置かれている境遇をしっかりと認識しないと。
「今、このマーブック地方周辺には『魔物』が多く出現していて、近隣の人々は常に命の危機と隣合わせな状態になっているんだ。いきなり魔物だなんて言われてもピンとこないかもしれないけど……ほら、あの林の中で遭遇した黒毛の獣もその魔物の一種だよ」
その言葉に、私はあの林で遭遇した黒毛の獣のことを想起する。
あの、禍々しさすら感じる赤い瞳。……確かに、『魔物』という言葉はしっくりくる。
でも、魔物だなんて……やっぱり、何もかもが現実離れしすぎてるよ。
「本来そんな状況を認知しているなら、国を挙げて討伐隊を編成したりするものみたいなんだけど、どうもマーブック地方みたいな辺境の地に人を回す余裕は無いって国は言ってるみたいで。……ひどい話だよな。マーブック地方だってザイウェンの領土だってのに。でも、誰もがマーブック地方のことを見捨てていたわけじゃない。マーブック地方のことを救おうとする人が現れたんだ」
そこまで言うと、高丘先輩は視線を目の前の地図から私に移す。
そして、いきなり視線を向けられたことに少しビックリしている私に、その人物の名前を告げる。
「――それが、今俺たちが待っているアレン様だよ」




