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――私の耳はおかしくなってしまったのだろうか。
思わずそんなことを思ってしまうくらいに、私は動揺してしまっていた。
真剣な表情で『やっと、二人きりになれたね』だなんて、いったい高丘先輩はどういうつもりでそんなこと……。
何だか異様なほどにドキドキしている自分がいる。
きっとこれは、突然のことに動揺してしまっているからそうなってしまっているだけだ。うん、そうに違いない。
そんな風に自分を納得させようとしながら、真剣な表情を見せる高丘先輩の姿を見やる。
今まで意識していなかったけど、高丘先輩は結構……いや、かなり美男子の部類に入る容姿の持ち主だ。均整のとれた顔立ちをしてるし、性格の良さもこれまでの経緯からは明らか。
そんな人が、真剣な表情を私に向けている……。
何だか高丘先輩に視線を向けていられなくなって、とりあえず部屋の様子を窺う。
静まり返った室内。そこには私と高丘先輩しかいなくて、部屋の出入り口のドアはしっかりと閉ざされている。
――つまり、密室に二人きりな状態。
結局、私のとった行動は明らかな事実を再認識させているだけなわけで。
……どうしていいかわからずに、最終的にはうつむくことしかできなくなった私。
「――優莉?」
そんな私の様子に、高丘先輩は表情を心配そうなものに変えて声を掛けてくる。
テーブルに手を付いて軽く身を乗り出しながら声を掛けてくる高丘先輩の姿に、私は余計に錯乱してしまう。
とはいえ、心配そうな表情を見せる高丘先輩をそのままにしておくわけにはいかない。
だから、私は何とかおかしくなりそうな鼓動の高まりに耐えつつ声を出す。
「だ、大丈夫です! 何でもないです! 何かその……ビックリしたっていうか、突然だったので、どうしたら良いものかと。た、確かに二人きりですよね。今までステラさんとずっと一緒にいたけど、そのステラさんが用事でいなくなっちゃったんですから。うん、そうですね。確かに二人きりです。高丘先輩と私だけしか今この部屋の中にはいないわけで――」
「ちょ、ちょっと優莉? 本当に大丈――」
私の明らかに錯乱した状態まるわかりの言葉に対して、余計に心配になったのだろう高丘先輩はそんな言葉を返していた。
けど、高丘先輩はその言葉の途中で私が何で錯乱してしまっているのかに気付いたみたい。
乗り出した身を一気に引いて、倒れてしまうんじゃないかと心配になってくるくらい勢いよく椅子に座りこんでいる。
「わ、悪い! その、そういう意味じゃないんだ。ただ、ようやくここの世界のこととか説明できるチャンスが来たなって思って……。ほら、ステラさんとかディックさんとか居る中で話すわけにもいかないからさ」
視線を私に向けることなく、恥ずかしそうに頬を少し赤らめながら話す高丘先輩。その姿に、私は自分の勝手な想像が間違っていたことなど全く意識になく、ただ呆然と視線を向けていた。
そして、高丘先輩の表情と反比例するように、徐々におさまっていく私のドキドキ。
「あ、あの……じゃあ、早速ですけどこの世界のこと、教えてくれますか?」
そのおかげか、私は何とかそんな言葉を高丘先輩に投げかけることができた。
相変わらず視線を逸らしたまま、そっと頷く高丘先輩。
これでようやく、この世界のことが少しでもわかるようになるんだ。
うぅ、でも何だか凄く雰囲気が気まずいよ……。




