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橋の途中にある小屋で、高丘先輩とステラさんにやり方を教わりながら入領手続きをした私は、ようやくプレストの砦の前まで辿り着いていた。
砦の大きな門の前にいる鎧を着た門番のような人に小屋でもらった入領許可証――その許可証は初めて砦に入る人だけが必要なものらしく、もらったのは私の分だけ――を見せると、門番のような人の号令と共に、その大きな門が開かれる。
そして、先行する高丘先輩とステラさんの後に続いて砦の中に足を踏み入れると、真っ直ぐ続く廊下のような場所に出た。
左右にはいくつか部屋への入り口があって、突き当たりには上下に続く階段が見てとれる。
「ふぅ、とりあえず無事に戻ってこれて良かったわね」
砦の中に入ってすぐ、ステラさんは腕を上に伸ばして息を吐く。すると、この廊下のような場所にいた人が、ステラさんの声に気付いてこちらを振り向いていた。
ステラさんの姿を確認して笑みを見せる、ラフな格好をした一人の男性。
「ステラ、それにリントもお疲――」
その男性は、ステラさんと高丘先輩に労いの声を掛けようとしていたけど、私と視線が合うとその言葉は途切れる。
そして、何だかポカンとした表情を見せたかと思うと、直ぐに何かを思い出したかのようにハッとした表情になって、私のもとに駆け寄ってきた。
いきなり側に寄って来られて、私はどうして良いかわからずに身を縮こませてしまう。
「君っ! もしかして、行き倒れてたって娘かい? 変わった格好だけど、どこの出身? もし良かったら、後で俺んとこ来ない? ココに来るの初めてだろ? 一通り案内して回ってあげ――」
「――ちょっと、いきなり何してるのよディック! ユーリちゃん、困っちゃってるじゃない!!」
いきなり質問攻めをしてくる男性に、その男性のことを慌てて止めに掛かるステラさん。その目まぐるしい展開に、私は二人の様子を窺いながらオロオロすることしかできない。
ディックと呼ばれた男性は、ステラさんの制止にもめげずに、尚も私に話し掛けてくる。
「ユーリっていうのか。俺はディック、よろしくな!」
そう言いながら、私の手をいきなり握ってくるディックさん。
何だかもう、とにかくビックリしちゃってまともに言葉を返すことができない。
「あ、あの……」
「ん、何? 早速案内して欲しい?」
「い、いえ、そうじゃなくて――」
「――いい加減にしてディック!!」
……響き渡る、ステラさんの叫び声。その声に、さすがのディックさんも追言するのを止めていた。
私の前で、軽く肩で息をしているステラさん。
「はは、とりあえず今は退いておいた方が良いかな。それじゃ、また後でねユーリちゃん!」
私からは確認することのできないステラさんの表情が相当凄いものなのか、ディックさんは引きつった表情を見せながら手を振って離れていく。
そして、そのディックさんが階段を昇っていくのを確認すると、ステラさんは大きなため息を漏らした。
「はぁ~。……ごめんねユーリちゃん。あいつ、可愛い子には目がなくって。ユーリちゃんのとこに行ったのが私で、本当に良かったわ」
がっくりとうな垂れながら呟くステラさんの横で、高丘先輩が声を出して笑っていた。
そんな高丘先輩の様子に、ステラさんは軽く頬を膨らませている。
「もぅ、笑いごとじゃないでしょ! って、ユーリちゃんまで――」
どうしてなんだろう。……よくわからない。
――けど、何故だかそんな二人の様子に、思わず私も声を出して笑っていた。




