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――鋭い剣の一閃が、黒毛の獣を容赦なく攻め立てる。
その気合いの入った表情に、剣を振るう度に飛び散る汗。
高丘先輩による斬撃の応酬。その一つ一つを、黒毛の獣は何とか飛び跳ねながら回避していた。
けど、明らかに黒毛の獣は防戦一方。それだけ、高丘先輩の攻撃が黒毛の獣に付け入る隙を与えていないのだろう。
「君――えっと、ユーリちゃん! 今のうちにこっちに!!」
高丘先輩の攻めが続く中、ステラさんがそう言って私を自身の方へいざなう。
その言葉に、私は小さく頷きながらステラさんのもとへと駆け出す。
そしてステラさんのもとまで辿り着いた私は、この後どうすれば良いのかわからずとりあえず頭を下げる。
「あの……助けていただいて、ありがとうございます」
「あ、うん。間に合って良かったよ。……ユーリちゃんはリント君の知り合い?」
「あの、それは……。あれ? そう言えば、どうして私の名前をご存知なんですか?」
「あぁ、だってリント君が叫んでたじゃない」
「あっ、そうですよね」
「それより、戦いはまだ終わったわけじゃない。――先にアイツを何とかしないとね」
ステラさんは会話もそこそこに、再び矢を取り出す。
矢を弦にかけ引いた時の軋む音が、ステラさんの周囲を緊迫した空間へと変貌させる。
そして再び、ステラさんの矢が黒毛の獣に向けて射られた。
高丘先輩による攻撃に対応するために動きまわっているにもかかわらず、狙い澄ました矢は黒毛の獣の後ろ脚に命中。矢が刺さった衝撃で、黒毛の獣はギャッと呻いて横転する。
そして、倒れこんだ黒毛の獣――その首筋に、高丘先輩の剣が突き立てられた。
声にならない空気が漏れる音を残し、黒毛の獣は絶命する。
その光景を、私は怖くてしっかりと見ることができなかった。
きっと、辺りには血飛沫が舞い、高丘先輩の剣にも血がヌラリと付着しているのだろう。
そんな光景を、まじまじと見ていることなんて、私には出来ない。
「――リント君後ろっ!!」
でも、ステラさんのそんな叫び声で、私の視線は高丘先輩のもとへ。
すると、高丘先輩のもとに、ステラさんの矢で胴を射ぬかれた黒毛の獣が最後の足掻きとばかりに迫っていた。
矢が刺さったままの胴から滲み出る赤黒い血液が、獣の黒毛を染めている。
高丘先輩はステラさんの叫び声に反応し、素早く背後を振り向く。
そして迫りくる黒毛の獣の存在を確認すると、素早く剣を下から斜め上に斬り上げた。
――黒毛の獣の顔の肉が、鈍い音と共に引き裂かれた。




