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私は複数ある見回り経路のパターンの中から適当に一つのものを選び、その経路にそって林の中を走っていた。
見回り経路のパターンにそって進んでいれば、少なくとも今日見回りに出た誰かに遭遇するのは間違いないはず。仮に私が選んだ経路がディックたちの担当する経路ではなかったとしても、誰かに遭遇さえすればディックたちがどの経路を進んでいったのか聞くことが出来る。
ディックたちが進んだ経路さえわかってしまえば、後はその経路を辿っていけば良いだけだ。
本来ならば、魔物のいるこの林の中を走るのはけして良い行動とは言えない。走るという行動は、目立つし足音も響く。
すなわちそれは、魔物に自分の存在を感づかれやすくなるということ。
それがわかっていても、私は走るのを止めることが出来なかった。少しでも早くディックたちのもとに辿りつきたいという思いが、自衛の念を大きく上回っていたから。
とはいえ、流石にずっと走りっぱなしできていた私は、徐々にその速度を落としていた。……気持ちに身体がついてこない。
それでも肩で息をしながら何とか先へと進んでいた私の前に、見回り当番の者と思われる人を数人確認することが出来た。……ディックたちではない。
歯がゆい気持ちを感じながらも早速ディックたちが進んだ経路を聞きだし、すぐさま進路を変更する。
ディックたちが進んだ経路はわかった。あとは、その経路を進んでいけばディックたちに会うことが出来る。
「もう少し……。無事でいて、ディック……」
ニィナが言ったような重傷を負ったディックがいるんだ。アレン様やリント君が下手に動くとは思えない。
仮に動いていたとしても、本当にゆっくりとした歩みであることは間違いないだろう。周囲を警戒しながら、慎重に進んでいるはずだ。
ディックたちと遭遇するのも、時間の問題――だと思っていた……その時、
――キィィィィッ!!
耳が痛くなるような高音で響く音が上の方から聞こえてきていた。また、それと同時に何かが羽ばたいているような音も聞こえてくる。
背筋がゾッとするような感を覚えながら、ゆっくりと視線を上に向けていく。この音……聞き覚えがある。
……間違いない。この音の正体は――魔物っ!!
視線を向けた先に、焦げ茶色をしたコウモリのような羽を持つ魔物が数匹飛びまわっていた。身体の部分はほぼ球体で、その球体に大きな口と小さな目が見てとれる。
以前遭遇したことのある魔物だった。身体は小さいが、集団で襲いかかってきて相当厄介な相手だったのを覚えている。
「くっ、こんなときにっ!」
矢を持つべく手を背中に回しながら、憎々しくそんな言葉を吐き捨てる。
――コウモリのような魔物たちは、そんな私のことを嘲笑うかのように空中で鳴き続けていた。




