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こんなにも気持ちと行動が瞬時にリンクするだなんて、思いもよらなかった。
ニィナからディックのことを聞いて、私は居ても立ってもいられずに部屋を飛び出していた。ちゃらちゃらしてるけど、それなりの腕を持っているディックがかなわないような魔物。……そんな魔物に重傷を負わされたんだ。きっと、ただで済んでいるはずがない。
ホントにもぅ、いつもちゃらちゃらしてるからそんな目に合うのよ! ふざけてばかりいるから、きっと魔物に隙でも見せちゃったんでしょ!
頭の中にディックのへらへらした顔ばかりが浮かんできて、思わず声に出して叫びたくなってしまう。
どうしてディックはいつもこうなんだろう。あんなへらへらしてないで真面目にやってれば、もっと戦いの腕だって上がるだろうし周りの評価だって上がると思うのに。
そんなことを思っていると、何で私はそんなディックのもとにこんなにも急ごうとしてるのか、一瞬疑問に感じてしまう。
部屋を飛び出し、階段も一段抜かしで駆け下り、息が切れそうになるのも気にせず走り続けたりして。
ディックの傍にはアレン様とリント君がいるじゃない。それに、すでに砦から何人か迎えに行ってるって、ニィナも言ってたじゃない。
武具庫から自分の弓矢を素早く取り出し、矢筒に入っている矢の本数を確認することもせずに砦の外へ。
浮かんでくる思いとは正反対な行動。……ううん、違う。心の奥底にある本当の想いに反応しての行動。
――そんなこと、とっくにわかっていることだった。
振り返ると私の動きに呆然としている門番の姿が見えたけど、そんなことは気にしても仕方のないこと。タスシール湖に架かる橋を、速度を緩めることなく一気に駆け抜けていく。
清々しい風に、美しい湖面。穏やかな陽光に、爽やかな匂い。そのどれもが、今の私には全くもってどうでもいいことだった。というか、それらは少しも私の目から頭の中に情報として伝わってくることがなかった。
橋を渡りきって林への入り口まで辿り着く。
見回り当番が見回りをする経路は、いくつかの決められたパターンに分かれている。私自身も度々見回りに行く身だから、当然そのことはわかっている。
でも、今日ディックたちがどのパターンの経路を辿っていったのかはわからない。……つまり、今ディックたちがどこにいるのかは、全く見当がつかない。
確実にディックたちに会うためには、この林への入り口で待機しているほかないんだ。
けど、今の私にはただ待っているだけでいることなんて……出来るわけがなかった。
「この前だって、リント君とユーリちゃんのいた場所に辿りつけたじゃない! ――大丈夫、絶対に会える!!」
――自らに言い聞かせるように呟きながら、私は林の中へと駆け出した。




