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「重傷って……ど、どうせたいしたことないんでしょ?」
ニィナさんの言葉に、ステラさんは無理矢理に作り上げたような笑みを見せながら呟いていた。その明らかなぎこちなさに、私は驚きを隠すことができない。
普段のステラさんからは想像できない、生気の抜けたような姿。
ニィナさんは、そんなステラさんの呟きを聞いても表情を変えることはなかった。真剣な表情のまま、ゆったりとした声で言葉を続ける。
「――今までに出会ったことのない魔物に遭遇したらしいの。……これまでに倒してきた魔物とは段違いに強かったそうよ」
「……………」
「アレン様とリントくんが何とか倒したみたいだけど、戦闘中にディックは……」
ニィナさんの話が続く中、ステラさんの表情は次第に生気を取り戻していく。眼差しに、力が戻ってくる。見たことのある、真剣な表情だ。――でも、
「……今は?」
「ついさっき伝令の人がリギュン様に話してるのを聞いたばかりだから、多分砦に帰還しようとしてる途中だと思う。何人か迎えに出ていったけど、ステラにも伝えた方が良いと――ステラっ!?」
――ステラさんはニィナさんの話を最後まで聞くことなく、部屋から勢いよく飛び出していた。突然の出来事に、私は慌ててステラさんの後を追おうとするけど、
「――ユーリちゃん!」
ニィナさんが身体の前に腕を出して、私の動きを制止させていた。そして視線を私に向けると、さっきまでの真剣な表情とは打って変わって穏やかな微笑みを見せる。
「大丈夫だから、あのまま行かせてあげて」
「で、でも……。ステラさんもそうですけど、私だってディックさんのこと心配ですし……」
「ふふ、大丈夫よ。確かに重傷ではあるみたいだけど、命に関わるような酷いものではなさそうだから」
「そう……なんですか?」
ニィナさんの変わり様に、私は何だか軽く呆けてしまう。そんな私の気持ちを見透かしているのか、ニィナさんはより笑みを強調させて話しを続ける。
「ええ。意識はしっかりしていて、出血もしていないみたい。……多分、聞いた感じだと肋骨を何本か骨折したくらいじゃないかしら」
「そ、それでも十分酷い状態じゃないですか!」
「そんなことないわよ。ここで生活していれば、骨折の一つや二つ当たり前。魔物と戦ってなくても、戦いの稽古をしてるだけで骨折する人はいっぱいいるんだから」
「でも……」
「もぅ、医療のプロが言ってるんだから素直に信じてほしいな。ディックの骨折だって、本当に酷かったら骨が内臓に刺さって意識を保ってなんかいられないハズだしね」
言いながら、私の頭をそっと撫でるニィナさん。……でも、もし本当にディックさんの容態がそれほど深刻なものではないんだったら、何でニィナさんはステラさんにあんな不安を煽るような話し方をしたんだろう。
そう思ってそのことを尋ねると、ニィナさんはクスッと声を出して笑いながらその理由を教えてくれた。
「それはね、今のステラがじれったくて見てらんないからよ」
――そう、教えてくれたはずなんだけど、私にはその言葉の意味がいまいちよくわからなかった。




