18-4
異形の獣の足にロープを引っ掛けるべく、アレン様と俺は思いっきり走った。そして、ついにロープを持つ手に重みを感じることに。
――異形の獣の足に、しっかりとロープが引っ掛かったんだ。
でも、手に掛る負荷の大きさに、俺は歩みを進めることが出来なくなる。……どうやらそれは、アレン様も同じようだ。
「踏ん張れっ! 呼吸を合わせるんだ! ――行くぞっ!!」
アレン様の掛け声に合わせて、持てる力を足腰に集中させる。湿気の多い林の土が、一点集中した力を抑えきれずに大きくめり込む。
大きくめり込む土に上手く力を込めるのが難しくなるけど、何とか踏ん張って一歩でも前に進もうと歯を食いしばる。
異形の獣は、足に掛った異物に違和感を感じている様子ではあるものの、特に慌てるような仕草は見せていない。……何かが足に当たったなぁ程度にしか思っていないのだろうか。
そんな異形の獣の様子に顔をしかめながらも、尚も力を込める。ミシミシというロープの軋む音が聞こえ、繊維が切れる感覚が手に伝わってくる。
――その音や感覚は、間違いなくアレン様と俺……そしてディックさんの命が削れる音であり、感覚だ。
「くっ、ダメなのかっ!?」
「弱音は吐くなっ! お前が見出した手段だろう!」
「ですが……」
絶え間なく手に伝わってくる感覚に、弱音を抑えることが出来ない。当然アレン様も感じているはずなんだから、――でも、アレン様はそんな俺を鼓舞する。
「――自分を信じないでどうする! お前の強い意志を感じたから、俺はお前のことを信じているんだ。お前なら出来ると言ったディックの想いを無にするな! 最後まで信じぬけ!!」
身の引き締まるような言葉。不安に押しつぶされそうだった俺の意思を支えてくれる、アレン様の強い意志。……そうだ。
自分で決めたことを自分が信じなくてどうする!
自分で決めたことを信じてくれた人のことを裏切るような言葉を口にしてどうする!
結果が出ていないうちに諦めかけてどうする!
……大丈夫。アレン様もディックさんも信じてくれたじゃないか!
「――こんのぉっ!!」
力が湧きあがってくる感覚が、心の奥底から沸々と顔を出し始めていた。その感覚が、自然と声に表れていた。
相変わらずロープは悲鳴を上げ続けている。でも、不思議と今はそんなロープが鋼鉄製の頑丈なものであるように思える。
切れるはずがない。俺の気持ち……そして、アレン様やディックさんの気持ちがこもったこのロープが。
――そして、その気持ちが伝わったロープが、異形の獣の体勢を大きく崩した。




