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カフェMay'sと読書少女  作者: 深那 優
17.苛立ちの影と偶像少年
104/117

17-5

 少しも怯むことなく、アレン様は異形の獣のもとへと駆け出していた。その迫力のある動きに、周りの空気がビュッと唸る。

 銀色の鎧を身に纏ったアレン様の姿は、さながら様々な物語に登場する聖騎士のようだ。

 アレン様の動きに、異形の獣は太い腕を構えて鉤爪をカチャカチャと鳴らす。……まるで『来るなら来てみろ』と挑発しているかのよう。

 そんな異形の獣を倒すべく、アレン様は白銀の剣を勢いよく斜め上へと斬り上げた。――何も持っていないのではないかと思ってしまうほど剣の重みを感じさせない、何とも軽やかな動き。

 鋭い一閃が、異形の獣に襲いかかる。しかし、その一閃が異形の獣を切り刻むことはなかった。

 異形の獣は太い腕を強引に横に振り抜き、アレン様の剣をその鉤爪でさばいたんだ。

 それどころか……きっと想像を絶するような腕力を持っているんだろう。剣をさばくだけには留まらず、剣を手離すことのなかったアレン様の体勢まで崩している。


「――ぐっ!!」


 流石にアレン様も、その状態に呻かずにはいられない。


「チッ! やっぱりそう簡単にはいかねぇかっ!!」


 アレン様の攻撃をいとも簡単にさばいた異形の獣に、ディックさんはそう吐き捨てつつ突っ込んでいく。

 アレン様がパワーに特化した騎士であるならば、ディックさんはスピードに特化した軽装兵。異形の獣に突っ込むディックさんの動きは、周囲の空間に風を生む。

 素早い動きで異形の獣の背後に回り込み、ガラ空きの背中に細身の剣を薙ぐ。流石の異形の獣もディックさんの動きには対応できず、もろにその斬撃を受けた。

 ――しかし、


「なっ!? コイツ、なんつ~堅ぇ身体してやがんだよ!!」


 苦々しく吐くディックさん。――鱗の皮膚に守られた異形の獣の身体には、わずかな裂傷しか与えることが出来なかったんだ。

 背中を掻こうとでもしているかのように太い腕を背後に向けようとする異形の獣に、ディックさんは慌てて後方に飛び退く。


「やはり一筋縄ではいかないようだな。……だが、全身鋼鉄のように堅いというわけではなかろう! ディック、跳べっ! やつの首を狙うんだ!!」


 ディックさんの攻撃がまともに効いていないのを確認したアレン様は、すぐさまそう的確な指示を出す。そして、その指示を瞬時に認識したディックさんが、間髪いれずに跳躍――した、その時だった。



 ――ドッ!!



 鈍い音が、一瞬響いてすぐにかき消える。

 異形の獣に向かって跳躍していたディックさん。だが、ディックさんが剣を振るう前に、異形の獣が視線をどこに向けるでもなくその場で身体を回転させていた。

 その動きによって、鋭い鉤爪の防壁が出来上がっていた。そして、そこに跳躍したディックさんは、その鋭い鉤爪をもろに受けてしまったんだ。


「ディックさん!!」


 車にはねられたかのように吹っ飛ばされたディックさんのもとに慌てて駆け寄る。ディックさんは何とか身体を動かそうとしてはいるものの、うつ伏せに倒れこんだまま立ち上がることが出来ない。


「失礼します!」


 すぐ横に屈んで、ディックさんの身体を仰向けにする。すると、革製の鎧の胴回りが無残に引き裂かれてはいたものの、出血してはいないことが確認できた。

 でも、あの嫌な鈍い音……。もしかしたら、骨を数本折られてしまっているかもしれない。

 それでも、激しい苦痛に顔を歪めてはいるものの、ディックさんはしっかりと呼吸している。とはいえ、もちろんまともに動ける状態ではないことは事実。

 異形の獣と相対しながらディックさんの様子を横目で見やるアレン様と、ディックさんの横で何もすることが出来ずにいる俺。



 ――それどころか、俺は異形の獣の強さを目の当たりにして、身体がすくみあがってしまっていた。


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