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カフェMay'sと読書少女  作者: 深那 優
17.苛立ちの影と偶像少年
102/117

17-3

「よし、それではこれよりグループ行動に移行する。編成は先ほど説明した通りだ。各々持ち場の見回りに徹し、魔物に遭遇した場合は状況を判断した上で殲滅すること。……けして無理はするな。――皆揃って、再びこの場に集合するように。以上だ!」


 『1-1』と記された赤い札の掛った目印の木の下、アレン様の号令によって、グループ分けされた見回り当番の面々はそれぞれの担当地区に向けて歩みを進めていく。

 見回り当番の中で最も下っ端の俺は必然的に力のある人と共に行動することになる。……今回は、アレン様とディックさんと一緒だ。


「さて、我々も行くとしよう。……ディック、リント、よろしく頼むぞ」


 その言葉に頷くと、アレン様はその大きな背中を見せつけるかのように先陣を切って進みだした。



 + + + + +



「――なぁリント、お前さっきから何気にしてるんだ?」

「えっ? ……何ですかいきなり?」


 アレン様を先頭に進む林の中。突然話し掛けてきたディックさんに、俺はその言葉の意図がわからず疑問を返していた。


「何ですかって……お前、自分で気付いてないのか?」

「だから何なんですか!」


 何だか苛立ちを感じながらそう返すと、ディックさんは俺の顔を指差しながらいたずらな笑みを見せる。


「お前、砦を出てからずっとひっでぇ顔してんぞ。ぶす~っとした顔しやがって。……そんなんじゃ折角の美男子が台無しだぜ?」


 そのディックさんの言葉を聞いて、思わずハッとする。

 意識的にそんな表情をしているつもりなんて、少しもなかった。でも……自分が心の中で思ったことは、自然と表情に表れてしまうものなんだろうか。

 あの、砦の門の前での優莉の行動。――見回り当番一人一人に送っていた言葉。

 俺にも掛けてくれた言葉が他の皆にも掛けられたと思うと、勝手に心の中がざわめいた。

 優莉が俺に掛けてくれた言葉に対する喜びよりも、他の皆に同じような言葉を掛けていたという事実による苛立ちの方が、俺の心のより多くの部分を支配していた。

 ……それが、表情に表れてしまっていたのか。


「すいません。別に何でもないので……気にしないでください」


 でも、その理由がわかったところで、俺はまだしばらくはこの表情を変えることが出来そうにない。――そう簡単に、この苛立ちを拭うことはできそうにない。

 ディックさんは小さく息を吐いて俺から視線を逸らした。その向けられた視線の先には、威風感じる偉大な背中が。


 ――しっかりしないと。……今は、見回りに集中しないとな。

 後ろでの俺とディックさんのやりとりになど目も向けずに見回りに徹しているアレン様に、俺はそう自覚させられた。


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