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Not Only But Also  作者: 加減乗除
第3章
98/106

9話 予想外 3

パラレルアパレルパルプンテンパー。

10回噛まずにいいませう。


―減―

 光の中から唐突に現れた少女。


「……オレガノ」

「……わからない。……魔法?」

 隣でアレンがオレガノに目の前の現象の説明を要求するが、オレガノにもこの光が何なのかは分からないようだ。


「――――――ァ」

「?」

 少女が何かを呟いた気がした。


「――――――――」

「おわっ!?」

 しかし、光の中に浮かんでいた少女は、何かを喋りかけたが、力尽きたかのように、こちらに倒れこんできた。


 とっさに前に飛び出し、その華奢な身体を受け止める。


 既に少女を包んでいた光は静まっていた。



―――――――――――――――――呪術科棟


「――それで? オレガノ。あの光について何か心当たりとか無いのかい?」

「……無い。光を操る魔法なんて、聞いたことないもの」

 オレガノの所属する呪術科は、相手に状態異常を負わせる魔法の使い手だが、それと同時にそれを解く解呪の魔法も学ぶ。


 そのため、全生徒の中でも魔法の種類に関しては、呪術科の生徒の方が魔法師科の生徒よりも詳しいのだ。


 しかし、そのオレガノでも知らないとなると、魔法の類ではないということなのか?


「困ったわね……」

 メリアが腕を組みながら時折こちらを見る。


 別の話題で困ってるんじゃないだろうな。

「そ、そんなわけないじゃい!」

 ふん、とメリアがそっぽを向く。


「ふむ。となると、だ。とりあえず情報からだね」

 アレンが顔を上げる。


「情報?」

「ああ。この少女はいきなり何もなかった空間に現れた。おそらく、空間を転移したわけだ。でも今だに、テレポートの魔法なんてものは生み出されてはいない。これが常識の範囲だよ」

 まあ、クロウみたいに時間を止めたりしたのなら話は別だけれど、とアレンが続ける。


 途端、脳裏にあの屋敷での惨敗の様子が思い出された。


 思わず拳を握りしめてしまう。


 ……そういえば、あのクリスタル、どうなったのだろうか。

 クロウが見つける前に、マリーさんやキョウさんが確保してくれていれば一安心なんだけれど。


「僕たちが状況を把握しないことには何も始まらないさ。そこで――」

 アレンがいったん言葉を切り、俺達を見回す。


「――図書館に行こうと思う!」



―――――――――――――――――――――――図書館棟。


「ふーん、光ねぇー」

 目の前で、だぼだぼの制服がくるりと回る。


 埃が舞う。


「あの、レコルトさん」

「なーにー?」

「あんまり動かないでくださいよ。先輩は慣れてるのかもしれないですけど」

「あー、ごめんごめん」

 

 俺、アレン、メリアの三人は今度こそオレガノに少女を見ていてもらい、情報を求めて図書館棟に来ていた。


 んでもって、図書委員長に話を聞いていたのだが。


「でもさー、オギ君。光を扱う魔法なんてまだ生まれてないでしょー? そんなの共通教科でも習うよー」

 図書委員長、シンス・レコルトさんが俺の頭をくしゃくしゃする。


「先輩、自重を」

「あー、ごめんごめん」

 まあ、この人はメリアとの一件で世話になったところもあるし、大きくは出られない。


「でも先輩、例えば――伝奇とか、言い伝えとか、そう言うところにはないんですか? そんな話」

 アレンが言う。


「あー、そうだねー。そういうものあったなー。『アルモンドの勇者』っていう子供向けの絵本だよ。そこに、確か伝説上の竜が出てくるっけー」

「あ、それなら知ってます!」

 メリアが後ろで思いついたように言った。


「確か、あの物語には、悪役として、光を使う悪の銀竜が出てくるんですよね?」

「あー。そうだよそうだよ。よく覚えてるねー、メリアちゃん」

「まあ、昔はよく読んだ話ですし」

 この人、レコルトさんは、三年間、この学院に入学して以来、滅多に図書館棟から出て来ない風雲児として名をはせた。しかもその知識は尋常ではない。


 なんといったって、この人はこの図書館棟のありとあらゆる蔵書の内容をすべて覚えているのだから。

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