7話 予想外 1
96話
―除―
呪術科と隠密科は演習内容等に関しては外部に漏れないようにするために、他の棟とは違って固く閉ざされている。そして寮に帰らなくてもいいように棟の中には数多くの部屋がある。
そして俺たちはその呪術棟の一室の扉の前に居た。
オレガノの個室らしい。
「……私は……その……できる方だから」
言い方を迷って、静かにオレガノはそう言った。
「つまり、成績優秀ってことだね」
とアレンが言った。
オレガノはそういう直接的な言い方を避けたかったのだろう。ばらしてしまったアレンを強くにらんでいる。それでもアレンは気づいていないかのように笑顔でふるまう。
表情の読めない男だ。
「ここに居るのか、オレガノ」
「……うん……一応、厳重にロックはかかってるから……誰にも入れないし、魔術干渉で中を除くこともできなくなってる……はず」
と、少し弱気に返事をしながら、扉のロックを外した。
そして扉を開け、俺たちは一人ずつ静かに入っていった。
そして全員が入ったのを確認してオレガノは扉をロックした。
「電気どこ?」
「……ここ」
オレガノは言いながらスイッチを押した。
部屋の明かりがつく。
「……へえ」
内装は思ったよりも普通だった。
呪術科の部屋だから部屋の中央に魔方陣でもあって、布団なんてないのかと思ったけれど、むしろホテルの部屋に近いような内装だった。
「私の部屋だから……私の好きなようにしてる」
「でも寝るときは寮に戻るんじゃないの?」
とメリアが質問したが、
「……呪術の課題は二日三日にわたることもあるから……」
ちなみにこれは禁則事項。ばらしたら……。
と、語尾を濁して言った。
寒気がする。もうそんな時期だろうか。そんな時期なんだ。そういうことにしよう。
「で」
アレンが指をさす。
ベッドの上に横たわった、白いワンピースの少女。
「目を覚まさないのかい?」
「……毒の種類はそんなに強いものではないから……たぶん、単純に疲れが溜まってて……」
「てことは身元も何もわからないわけだ」
俺はそう言って少女に近づいた。
……見れば見るほど、可憐な少女である。
「オギ」
「うん、寝てるようだ。ただの確認終了」
「オギ」
「さてと、これからどうしようか」
どう?この華麗なスルー。
メリアもあきれて何も言えないぜ!
「……この子は起きるまで私がここで預かる……というか保護しておくから……安心して」
「そうか。何かあったら言ってくれ、オレガノ。すぐ駆けつけるから」
とアレンは言って笑った。オレガノは静かにうなずく。
「じゃ、俺たちは今から一応授業だ。行ってくるぜ」
俺はそう言ってメリアに目配せしてから一緒に歩き出した。
アレンはこれからのことをオレガノと相談するだろう。
まあただの少女の来訪。目を覚ましたら学園側に報告して、それでいいだろう。
そう思っていた。