3話 夜散歩 3
除
うちの学校は大陸のほぼ中央に位置している。
故に、もっとも『都会』ではあるのだ。すなわち、あらゆるものが『最大』と言っても過言ではない。
まあつまり何が言いたいかと言えば、この学校も大きさとしては最大級なのだ。
そして学校の校庭の奥には小規模ながら(と言ってもかなり大きいが、)森があるのだ。
アレンはそこに俺を連れて行った。
「何だってんだよ」
「いいからいいから」
「こんな気持ちのいい夜なんだから、森みたいな気味の悪いところやめにしようぜ?」
「何だよ、怖いのかい?」
とアレンは笑う。
「……怖くねーよ!」
「そう。だったらいいよね」
とアレンはそのまま先に進む。俺はそれを静かに追う。
そして5分くらい歩くと、少し開けた場所についた。
「ここだ」
「ここがどうかしたのか?」
「ほら、空を見てごらん」
「空?」
俺は空を見上げた。
森の木々が開けた空に、無数の星。
それぞれが輝きを放っている。
「隠密の古代の術式にはあの星々が関わっているって言われてる。それは呪術や魔術も一緒らしいね。あの星空がこの僕らの世界を守ってくれているのさ」
「これが……」
思わず感嘆の言葉が出る。
「どう?」
「すげー……」
「だろ?」
「これが見せたかったものか?」
「ああ。でももう一個、すげーのがある」
と、アレンは笑った。
それからさらに歩き始める。
「今日は運がいいからな。いい感じの場所に月がある」
「月?」
「最高に月が見やすい、スポットライトの様な広場さ」
とアレンはどんどん進んでいく。
「っと、先に君に行ってもらおうかな」
アレンはそう言って笑った。
俺は指示に従って前を歩く。
しばらくすると広い場所についた。
「……」
「どうだい?」
「ああ、すごいな」
「だろ?」
「毎晩、お前は犯罪まがいのことでもしてたのか?」
「……え?」
と、アレンは俺の前を見る。
俺たちの視線の先の広い広場の一部を月明かりが照らしている。
そこには倒れた少女。
スポットライトのように照らしていた。
「見せたいものってこれか?まあ、お前の色恋に文句をつけるつもりはないけど、オレガノに何も言わずにこんなことをするのはどうかと思――」
「いやいや、違う違う。僕も予想外だ」
と、アレンは静かに駆け寄る。
俺もそれを追う。
その人は少女だった。
「……気絶しているだけみたいだ」
「それにしても、白いな」
肌は白く、衣服も白い。髪の毛も限りなく白に近い白銀だ。
「……どうする?」
「いくら校内で安全とはいえ、放置しておくわけにはいかないだろうけど……」
とアレンが少女の体を軽く持ち上げる。
「……緊急事態だ。急いで帰ろう」
と、今度は全力で少女の体を持ち上げた。
「どうした?」
「軽い怪我だけど、毒が回りつつある。オレガノを呼んで解毒してもらうことにしよう」
言っていることは冷静だが早口であるため、危険であることが分かった。
俺たちは森を走って抜けた。