9話 この世界、非常識は数多い。
どうも、加減乗除です。
非常識な人は世の中に多い。
もちろん、常識を知らないという意味でも。常識的に考えてありえないという意味でも。
―加―
「な、何だ!?」
発砲音と共に、一匹のグリフォスがよろめいたようになる。
「見て、あの耳のところ!! 何かに撃ち抜かれてる!!」
メリアが指を指したほうのグリフォスを見てみると、確かに耳から血が出ている。
そして、ズガァン、ズガァンと二つ続けて発砲音が。
「「Guooooo!!」」
その音と共に、また二つのグリフォスがよろめく。
大きな発砲音に驚いて、グリフォスは逃げていった。
「一体、何が……」
状況が全く理解できなかった。
周りには誰もいないはずだ。
「チンタラ戦ってんじゃねーぞ、クソがきが!グリフォスの弱点と生態ぐらい学んでから来い、カス!」
前言撤回。
少し遠くの小高い場所に、大型の長距離狙撃用ライフルを担いで男が立っていた。
「普通グリフォスっつったら大きな音と羽が弱点って相場が決まってんだよ!! 勉強しなおせ!!」
急に現れた男に説教され始めた。
だが状況からしてやっぱりこの男が俺達を助けてくれたんだろうか。
「2度と生半可な気持ちで依頼受けんなよ、ボケ!」
男は言って、小高い地点から、ライフルと数体のグリフォスを担いで去っていった。
「な・・・・・・何なんだ、アイツ・・・・・・」
俺の疑問に答えたのは、
「フォックス・F・ゼロシルバー」
隣のメリアさんだった。
「知ってるのか?」
「今は狙撃科の4年生。三年連続評価1で在籍中よ」
「はぁ!?」
何だソイツは! 評価1で進級なんて出来るのか!?
「狙撃科は基本的に集団行動を主とする。しかし彼は風来坊にして風雲児。孤高の狙撃として有名な男よ。それでも進級できるのは、彼が圧倒的に強いから・・・・・・。まあ、全部聴いた話だけどね」
なるほど、なるほど。そんなある意味で凄い事は分かった。だ・が。
「・・・・・・それにしても、ムカつく!!」
俺の声は谷に響き渡った。
「帰ったぜ」
俺は寮長に繭茸を渡し、1、2言話をして(その間に寮長へグリフォスのことを伝えておいた)、残りをメリアに任せてから自室に入った。
「疲れたー・・・・・・」
俺は部屋の唯一のソファに座り込んだ。
「お疲れ。大丈夫だったか?」
そう言ってアレン(1日で2回も出会えるとは、珍しい)は、ソファの前の机にお茶の入ったカップを置いた。
「大丈夫じゃねーよ。グリフォスが一気に集団でやってきやがった」
「あー・・・・・・。あそこはグリフォスが多いからな。やっぱり、僕もついて行けばよかったな」
「お前は1人で依頼ばっかりやっているだろ?隠密師は孤高を主とする――――」
――孤高の狙撃と呼ばれているわ。
メリアの言葉がふと思い出され、急に現れて叫んだ、説教を思い出す。
「オギ?」
「・・・・・・アイツ・・・・・・何なんだよ!!」
急に現れて、急に上から目線で説教するって何て奴だ!評価1のくせに・・・・・・!!
俺の怒りは、ふつふつとこみ上げてきた。