Battle start!
戦闘開始。
―減―
「お前、二枚目ってことは……」
「ああ、そうだ。そう滅多に食えるもんでもないしな。二つ食ってもばちは当たらねえだろ」
そう言いながら、ゼロはライフルを持っていない方の手に二枚の整理券をひらひらとさせた。
「クソっ! 俺の、年に二回の至福を奪われてたまるか……!」
「オギ、悪いけれど、あの整理券は僕の物だ」
「そうかよ。じゃあ……」
「「どっちが先にゼロから奪えるか!」」
切り替えの早さは戦闘においても優位に立てる特権だ。
「ハッ。調子に乗るなよ餓鬼どもが。こいつは、渡さねえよッ」
いち早く突っ込んでいくアレンの手刀を、ゼロが促し。
「五月蠅い! 大体二個も食べるとか! ふざけん……なッ!」
俺の蹴りをライフルで受け止める。
「おいおい、全然覇気が足りねえぞお前ら。やる気あるのか?」
「こんのッ……」
完全に嫌がらせじゃねえか!
「まあ、二つも食ったらさすがに気分が悪くなるよな。……よし」
ゼロがにやりと笑うと、アレンの拳を払い、すぐそこの窓を開けた。
そして、片手に整理券を一枚持ち、それを窓の外に投げ捨てた。
……投げ捨てた!?
「この……手前ええええ!」
「ハッ。せいぜい戦争してろ。俺から奪おうなんざ、百年早い」
「うっさい! いいからもう一枚の整理券を……」
「オギ、僕は確実な方法って奴が大好きでさ」
俺が激昂しているすぐ横を、アレンがそう言いながらさっと通り抜けて行った。
「おい、アレン!」
「じゃあね、オギ。僕はもう一枚を頂くよ」
アレンが窓からさっと飛び降りる。
ゼロの投げ捨てたもう一枚を追うらしい。
「おいおいどうする? ここで俺と引き換え期限が過ぎるまでバトる気か?」
「……くそッ!」
もうこうなりゃ自棄だ!
俺も窓枠に手をかけ、さっと外に飛び出す。
後ろから、「そういや、フレシアがアイス好きだったっけか……」とかなんとか言うゼロの呟きが聞こえた気がしたが、今はそれどころじゃない。
「アレン! 待てよ!」
身体を転がして衝撃を和らげ、芝生の上を駆ける。
「オギ、まだ着いてくるのかい? 風に飛ぶ整理券なんて、君には回収できないと思うけれどッ!」
前のアレンが振り向いて小さい刃を投げてくる。
「あぶねっ! だけどな!元をたどれば先に俺が取ろうとしてたものなんだ!」
「同時に掴んだじゃないか!」
「知るか!」
自棄である。
もうどうしようもない程に自棄である。
「全く! 君とはあまりやりあいたくないのに!」
「こっちもだ!」
そうこう言いながら、風に流されて右へ左へ移動する整理券を追いかける。
が。
ぱしっ、とその整理券を誰かが掴んだ。
「なッ!?」
アレン、続いて俺が足を止め、その人物を確認する。
「ああ、丁度よかったわ。まさかこんな大事な日に寝坊するなんてね。私もオギの馬鹿が移りつつあるんじゃないかしら」
寝癖を立たせているメリアが、眠そうに立っていた。