44話 例外の無い規則は無い
文字通りです。
―加―
「……追い駆け、ないと……」
「どこへ行こうってんだ……、少年」
まだ血の流れが余り戻っておらずふらふらなオギが立ち上がり、追い駆けようとするが、キョウさんの声で止められる。
キョウさんは“金色夜叉”が解けたのか、文字通り地面に倒れこんでいた。
「キョウさんは……、どこに行ったのかな?」
「おそらく、今頃のうのうとクリスタルの部屋に行っているでしょうね」
「ふぅ。お久しぶりです。黒きクリスタルよ」
クロウは真っ二つにされた金庫の中にある黒いクリスタルに手を掛ける。
「いただく」
そのままクリスタルに触れる。
「相変わらず美しいな」
右手に握り締め、うっとりと眺める。
その時だった。
「……!?」
ジュッ、と肉の焼ける音が聞こえる。
その音は右手から聞こえ、クロウはその熱さで思わずクリスタルを離してしまう。
クリスタルは黒く光輝き、空にふわふわと浮いていた。
「反発……、まさか」
――――引かれよ、心悪しき者よ。
クロウの言葉に答えるように、声が響く。
それはクリスタルから聞こえてきている。
「人の右手焦がしといて、何が引かれよ、だ。解呪法」
クリスタルの周りに円環が四本現れる。
「丸裸にしましょうか、美しきクリスタルよ」
両手をクリスタルに向け、集中する。
無駄よ、この程度。
そうクリスタルから返事が聞こえる。
すると、それを証明するかのように円環が砕け散る。
天罰。
クリスタルはそう呟く。
その瞬間、黒い光がクロウを貫く。
「くっ!!」
その攻撃にひるんだ隙に、クリスタルは窓を割って飛び出した。