8話 この世界の構成要素は、理不尽。
加減乗除です。
8話目。
本当に、理不尽な世界ですよね。
―除―
「まぁ・・・・・・アレだ」
俺はそう言って立ち上がり、メリアを見た。
「どんな楽そうな依頼も、お前と行くとろくな事にはならない」
「それは偏見よ。大体、この依頼を受けたのは貴方でしょう」
「お前が関わってるってだけで、十分な理由になりそうだ」
「後で話し合いね」
「今は目の前の敵を、か・・・・・・」
俺は自分の武器を。
自分の武器を・・・・・・。
あれ?
「どこ行った!?」
「はぁ!?」
メリアはそう言って、俺を睨む。
「全く・・・・・・役に立たない」
言って、
「呪文詠唱」
メリアは呪文詠唱を始めた。
「火よ、重なり合い炎となれ」
詠唱により、手の上に炎が出来る。
「詠唱魔法。炎よ、地を離れ鳥となり飛翔せよ!」
そう言ってメリアは炎を投げるようにして、一体のグリフォスに向かって投げた。
詠唱した通り、まるで鳥のような速さでグリフォスの体を突き抜けた。
「Giaaaaaaaaa!!」
と、猛獣ならではの叫び声をだし、グリフォスは燃えながら、谷の段差に遊ばれつつ谷底へと消えていく。
「ヨッ!流石、アルメリア様!」
「うるさい!気が散る!大体、アンタが武器を持ってたら、私との連携でこの群れぐらい一瞬でしょうが!」
「いやー、何処にいったのか分か――メリア!」
俺の叫びを聞いて、メリアは俺の方から視線を外し、正面を向いた。
グリフォスが眼前に迫っていた。
「しまった!」
メリアはそう言って、詠唱を始めようとするがグリフォスは雄叫びを上げながら、脚を振り上げた。
爪が鋭く光った。
「く・・・・・・」
メリアが防御の態勢を取る。グリフォスは爪で引っ掻こうとしてくる。
ブォン!!
という風を切る音を立てて、爪は空を切る。
「大丈夫か!」
メリアを腕に抱いた状態で、聞いた。
「ありがとう!」
「体張って守んなきゃならないんでな」
俺の言葉を聞いたが早いか、メリアは立ち上がって、走りこみグリフォスの頭部に手を当てた。
「炎!」
手から業火を出し、グリフォスを丸焼きにする。
今のは、略式詠唱。
単純に炎を出すだけだが、技術の腕の高いものでなければ出来ない高等技術で、呪文の威力が高くなればなるほど略式は難しくなる。
「ナイス、メリア」
俺はそう言って、群れを見やる。
「・・・・・・しかし、この量はちょっときついな・・・・・・」
「呪文詠唱。火よ、重なり合い炎となれ」
俺の話を聞いていたのか、いないのか、炎を出す。
「詠唱魔法。炎よ、地を離れ鳥となり飛翔せよ!」
そして、炎を構えた。
「Giooooooo!」
「Giaaaaaaa!!」
「Giiiiiiii!!!」
まるで共鳴のようにグリフォス達が雄叫びを上げる。
何か、まずい・・・・・・。
「くらえ!」
「メリア!やめろ!」
叫んだが遅かった。手から炎は離れ、鳥のように宙を舞う。
「「「Giiiiioooooooaaaaaaaa!!」」」
それとほぼ同時にグリフォス達がもう一度鳴き、羽でバサバサと扇ぎはじめた。
一体一体の風圧がそこまで強くないと仮定しよう。現に、空中で羽ばたいている程度の風圧では炎は止まらないし、一体の羽ばたきでは意味をなさない。
しかし、群れが一斉に羽ばたけば――。
「!?」
飛んでいった炎は、向きを変えて、こちらに向かって飛んできた。
「メリア!」
俺は叫んで、メリアの体を引っ張った。
炎は先ほどまでメリアが居た地点に落下した。
強風は未だに吹いている。
「これじゃ、拡散攻撃も防がれてしまうわね・・・・・・」
「くっそ・・・・・・」
どうすればいい?
俺は空中の相手と戦うのは何でもないが、空中戦は得意ではない。どころか、武器すら持っていないのだ。
メリアも同様で、空を飛べないために空中戦は得意ではないのだ。
「アレンとオレガノの方が、これは得意そうだな」
俺が呟いたのを最後に、グリフォスの内の一体が突っ込んできた。
他の数体は相変わらず、羽ばたきによって強風を作り上げている。
炎を出せば、こちらにもダメージが来る。盾も持っていないため、グリフォスの攻撃を防げない。強風に煽られ、避けることも難しい。
万事休す!俺達にはもう打つ手が残っていない!
心でそう思った途端。
ズガン!
という発砲音がして、グリフォスの体を何かが貫いた。