41話 空谷の跫音
くうこくのきょうおん。
人気のないさびしい谷間に響く足音。転じて、孤独なときに思いがけなく人が訪れたり便りが届いたりする喜び。
キョウさんがその金色に輝く腕をふるい、素早くクロウに距離を詰める。
「ぐっ」
「はっ! ざまあないな、クロウ。いくらお前でも、俺とマリーメイド長が相手となれば、さすがのお前も、逃げられはしないだろう」
キョウさんの拳が素早く動き、クロウが防戦に努める。
「く……そっ……」
「オギ、どう……なってるの? 私の向きからじゃ……見えない……」
後ろからメリアの声とオレガノのうめく声がする。
あれだけの肉弾戦を続けながらも、新たな戦力を増やさないためか、俺達の拘束は離していない。
そこはさすがというところか。
「キョウさんと……クロウが……戦っている」
「戦況は……?」
「キョウさんが……今は押している……」
「そう……」
俺の目の前でレベルの違う戦闘が繰り広げられている。
キョウさんの方が圧倒しているように見える。見えづらいが、マリーさんがその糸を張り巡らせて戦闘エリアの周りを囲み、退路を塞ぐ。
だが、あの時、一瞬の圧力。
クロウから感じた圧倒的な殺意。
それが今は、まだ刀を収めている。
「ふん、腕が鈍ったのか!? クロウさんよお!」
「……ふふふふふふ……」
「……何が可笑しい」
いったんキョウさんが下がり、不敵な笑みを浮かべるクロウを見据える。
「ふははは……。貴様らはまだ分かっていない。分かっていない!!」
「なんだと?」
クロウが腕を振り上げ、睨みつけるような視線をこちらに向ける。
「貴様らはまだ理解していない。あのクリスタルが……あのパンドラの箱がいかに重要なものか。黒き漆黒のクリスタルに秘めらられしモノが、世界をも揺るがす力を持っていると」
「クリスタルだあ? なんでどいつもこいつもあのクリスタルにこだわる?」
キョウさんがうざったそうに唸る。




