39話 横槍が入る
そのままの意味じゃねーンだよ
―除―
クロウが右腕を振り上げる。
「拘束魔法:参式、発――」
パァン!と、右腕が弾かれた。
石飛礫が遠くから投げられたようだ。
「……遠距離まで指定はしていなかったのが仇となったか」
そう言いながらも、余裕そうな笑みを見せ、俺たちの拘束が解けることはない。
「いやいや、あなたが何をしているのか分からなかったので、遠距離から様子を見ようとしただけですから」
と、いつものように誰かに恩を着せるでもなく、自分を褒めるわけでもなく、事実を相手にぶつける。
こういう喋り方をするのは――
「アレン……」
首を向けることはできないが、このタイミングで戦いに参加できる男はこいつくらいだ。
「それにしても貴方が真犯人ですか」
「真犯人という言い方は好まんな」
「では、黒幕ということになりますね」
「だ」
そう言って、クロウが腕を別方向に向けた。
その瞬間にニヤリと笑った。
「俺のレベルを間違えているぞ」
そして腕を下げると、
「が……!?」
アレンの短い悲鳴が聞こえる。
「拘束魔法:参式、発動」
張りつめた空気が出来上がる。
体は持ち上がることを拒否し、重力が倍になったような感覚さえあった。
「どうなってんだ……!」
「壱式はあなた方の周りにまとわりつく、空気を。弐式はあなた方の筋肉を。参式はあなた方の血流の速度を、それぞれ拘束する。まぁ、正確に言うなら、拘束というよりは、超低速にするだけなんですよ」
急に敬語に戻り発言をする。
そうか。なるほど、血流が拘束されて体が重く感じているのだ。
貧血状態が常に続いているようなものか。
「……くっそ」
「さてと、どういう理由であなた方は死にますか?」
クロウが笑う。
横槍が入る。
それを直接的に表現したものを見たことがあるだろうか。
クロウの頭蓋に向かって横やりが飛んできた。
「……」
クロウは、静かに手を差し出して、横槍を地面に水平な状態で止めた。
「どうだろう、ここでお前も死んでみてくれよ」
「処理は私たちに任せてください」
そう言って現れたのは、マリーさんとキョウさんだった。
三本柱がここにそろったのだ。