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38話 友と葡萄酒は古い程良し
―乗―
「畜……生……!」俺は動かない体を捩り、剣を取ろうと試みた。柄に指が触れた。手汗で厭にベタついた。柄を握り、鞘から引き抜く。
「拘束魔法:弐式、発動」
クロウが言った途端、俺の腕はまるで時が止まったかのように動かなくなった。渾身の力を入れて抗ってもビクともしない。
「抵抗しても一切合切無駄だ。さっさと……」
クロウの台詞の途中で彼にメリアの詠唱破棄魔法の火球が飛んできた。
クロウは顔色を一切変えずそれを殴って霧散させた。無数の火の粉が辺りに舞い散った。手袋に付着した炭をうざったそうに払い除ける。
「無駄だというのに」
クロウが一歩進む毎に、重圧が強くなっていく。動けない三人は意識が飛びそうなのを懸命に堪える。