36話 一葉落ちて天下の秋を知る
さて、いい感じの話、だと思います。
お久しぶりです、加です。
「……ほう」
クロウさんはそう呟くと、口元をゆがめて少し笑った。
その笑いはシオンさんに見せた優しい笑顔ではなく。
もっと邪悪なものだった。
「一体、何が可笑しいんですか……」
「いや、いやいやいや。少し驚いたんですよ」
クロウさんはそう言いながら一歩下がる。
「ただの少年かと思って、私も多少口が滑りました。さて、どうしましょう」
両手を広げて、おどけるクロウさん。
何なんだ。
何なんだこの余裕は。
一体この人は、何者なんだ。
「では一つ聞きますが、君はこのことを、どうする気ですか?」
クロウさんが尋ねてきた。
「どうするって、そりゃあ……」
マリーさんに、伝えないと……。
「一つ聞きますが、誰があなたのそんな話を信じるんでしょうね」
「どういう、ことですか?」
「いえいえ。あなた方はこの屋敷を守ってくれた。とはいえまだ2,3日しか経っていない。かたや私はここで何年も働き続けている。君が、クロウがおかしなことを言ったと言って、誰が信じるのか、少し疑問に思いましてね。言い訳ならまだ、色々あるのですが」
……確かに、この人なら皆を信じさせるくらい容易い気がする。
「私は、信じるわよ?」「……信じる、アレンの親友だし」
その声は、オギの後ろから聞こえてきた。
「メリア、オレガノ!? どうして!?」
それはメリアとオレガノだった。
「おやおや、これは……」
クロウさんは事の次第を見守っている。
「あなたの言葉を借りるならね、今まで私と一緒にオギは何年も居て、アンタなんか一日しか会ってないんだから!!」
メリアはビシッと指を指す。
いや、だからどうしてここに居るのか教えて欲しいんだが。
「……さっき私がゲルって使役キメラを潰したって言ったでしょ」
どうやらそれはオレガノが教えてくれるらしい。
「流石に数時間で百数匹も見つけられるわけ無いでしょ? メリアに手伝ってもらってたんだけどね……。ある部屋だけ、このキメラが無かったのよ」
「それが、私の部屋というわけですか?」
オレガノの言葉にはクロウさんが答えた。
「えぇ。そりゃ、自分の部屋を盗聴なんてするはずないものね。それに、屋敷を自由に動き回っても全く違和感が無いですしね」
どうやらそれを聞いて、二人もクロウさんのところに来ていたのか。
「大した学生だ。シオン嬢のお友達も居るとなっては、少しまずいかもしれませんね」
クロウさんは口ではまずい、と言いながらも笑みを浮かべる。
次の瞬間。
「!?」
全身の毛が逆立った。
鳥肌、を超える。圧倒的な、動物的直感とも言えるものが、それを感じ取った。
気迫。
クロウさんから滲み出る、その気迫に、気圧された。
形容するなら、人間の密度が違うと言えば良いのだろうか。
そのクロウさんの重みに耐え切れない。
どうやらそれはメリアやオレガノも感じ取っているようで、顔からは冷や汗が出ていて、顔も少し青くなっている。
「では、記憶くらいはぶっ飛んでいただきましょうか。価値も分からぬゴミ共が」
最後の言葉はおそらく、この人の地なんだろう。
言い放つクロウさんの目は、鋭く光っていた。
悪役ひゃっほいっ!!
一番書きやすいのは悪役です。いや本当に。




