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Not Only But Also  作者: 加減乗除
第2章 護衛編
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33話 歓学院の雀は蒙求をさえずる

諺の意味は、普段から身近に見たり聞いたりしていることは、いつの間にか覚えてしまうというたとえ。

だ、そうです。

―減―

 ――しかし、俺達はクロウさんが帰ってくるまで何をすればよいのだろうか。


 俺は……そうだな。

 剣でも稽古するかな。兵士もいることだし。


 

 翌日になって、アレンが着々と回復しているのを見に行った俺は、その後、一人で四階の金庫部屋に向かっていた。

 ……いや、特に理由はないんだが。あの時の戦闘に何かひっかかるものがあったんだよな。

 

 ドアを開け、中を確認する。


「……あら?」

 中には、乾いた血だまりと、窓や家具の破片。現場はそのままだな。

 そして、その前に立つシオン嬢と、数人の執事とメイド達。


「シオンさん。なんでここに?」

 そう聞くと、シオンさんは困ったように微笑んだ。


「私はこの御屋敷の主ですよ? 御屋敷で起こったことは私が責任を持って処理しないと。それに、こういうことはよくあるんです」

 まあ、普段はほとんどクロウがやってくれるのですけれどね。とシオンさんは続けた。


「しかし、ここはその……」

 もう乾いているとはいえ、血や肉片が飛び散っていた場所だ。


 俺のように戦闘を生業としているような学院の生徒とは違って、いわゆる深窓の令嬢レベルの人だろうに。こんな現場を見せて良い物なのだろうか。

「御心配には及びませんよ」

 シオンさんはそう言うと、こちらに近づいてきた。


「しかし、今回は手強れが相手だったようですね。メリアもあなたもご学友も、ご無事でなによりです」

「そりゃあ、どうも」

 しかし、シオンさんの方は大丈夫だったのだろうか。

 一応あの時オレガノに任せはしたが、その後のことは聞いていなかった。


「私はいたって健康ですよ。賊が侵入した時点で、周りに執事が待機していましたから」

 警備にはやはり問題は無かったようだな。


 しかし、連中のなかには魔術師もいたはずだ。

 奴らはどうして罠魔法をくぐり抜けられたのだろか。


 俺が気になっていたのはそこだ。


「そうですね……。私もそればかりが気がかりでここを調べていたのです。もしかすると、解呪系の魔術を使う相手がいたのかもしれません」

 解呪か。

 呪術師とは対極に位置する、稀有な魔術。呪いや、仕掛けられた魔術を打ち破る術式だ。


 上位の呪術師もこれが使えるが、呪う方に力を注いでいることもあり、解呪の能力が高い授受知氏は少ない。

 それこそ、その解呪に全ての魔力を使っているような相手でなければ、ここの高度な罠魔法の突破は困難なはずだ。

「どちらにしても、相手がこれまでとは違う、高位の魔術を使い、陽動をも用意するほど人力のある集団だということは確かです」

 シオンさんは難しい顔で言った。

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