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Not Only But Also  作者: 加減乗除
第2章 護衛編
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31話 待てば海路の日和あり


 待ったって現実は前にあるだけだぜ?いつまで経っても近くには来ない。


 命も恋も明日も昨日も。それでも待てって言うのか?


 ―除―


 アレンはそう言って苦笑する。

「それよりクリスタルは無事だったのか?」

「ああ。でもあの猿によって金庫は破壊されちまったから、今は別の場所で保管されているってのが、ちょっと痛いところかもしれないな」

 そう言って天井を見る。

「とりあえずアレンが回復するまでと・・・・・・クロウさんが帰ってくるまではこうしていないといけないな」

「僕のことは気にしなくてもいいよ」

「そういうわけにはいかないよ」

 仲間だから、というのもあるが別の理由もある。


 昨夜の騒動で破損した場所を修復する作業が現在はすすめられている。

 オレガノとメリアは既に2人とも行動中である(オレガノはハンマーと釘の扱いがお手の物だ)。

 俺自身も本当は配属されているのだが、アレンのことが心配でココまで来たというわけだ。


「嘘はいけないな、オギ」

「バレたか」

 本当はサボりに来ただけだ。何だかんだ行ってもアレンの事を心配はしていない。彼にとってこのくらいの怪我は日常茶飯事なのだから。

 だから、一般人が2週間掛かる怪我でも彼にとっては5日もあれば何とかなるだろう。

「修復作業もそんなには時間は掛からないだろう?だから早く帰っていいのに・・・・・・」

「どうせクロウさんが来るまでは依頼は継続するんだよ」

 俺はそう言って席を立ち、アレンの顔にずいっと近寄る。

「お前がいればもっと早く修復作業もできるんだよ。分かったら、治すことだけ考えろ」

 そう言い放って部屋を出た。

 アレンが、ありがとう、と一言言ったのが聴こえた。


 それからは本当に大変だった。

 対立していた兵士たちとも仲良く汗を流し協力し合って、色々な作業に取り掛かった。キョウチクトウさんは怪我が思ったより酷かったようで、作業は余り手伝ってはいなかったが兵士達を激励する役目として十分に存在自体で役割が強かった。

 メリアは労働力としてはやや弱いので、メイドたちと一緒に兵士達のための食事作りに取り掛かったらしいが。

 メリアはちゃんと足手まといにならなかっただろうか・・・・・・。

 対してオレガノは基本的に器用らしく、修理作業も食事作りも両方ともこなしていたそうだ。

 マリーさんが『あの子・・・・・・メイドにしてみたいわね』と、静かに言っていたのを聞いた。いつものドレスも汚れてしまっていたが、よく考えれば見た目はお嬢様っぽい。


 と、そういうわけで1日の作業のほとんどが終了して、夕食の最中だった。

 俺の周辺には当然の如く、兵士勢が集まっての夕食だった。

「キョクチクトウさんって強いんですよね?」

 俺はコマクサさんに聞いてみる。

「あー、まぁな。あの人に勝った事があるのは2人だけだろ?」

 以前いがみ合っていた相手とは思えないほどの軽さだ。まぁ、嫌いじゃないぜ。

「2人?」

「ああ!俺らの屋敷の三本柱さ!」

 そう言って、兵士の1人が盛り上がりを見せる。

「メイド長のマリー!執事長のクロウ!そして我らが団長のキョクチクトウ!この3人がいるからこの屋敷は成り立ってんだぜ?」

「ということは、キョクチクトウさんが負けた2人というのは・・・・・・」

「ああ。マリーさんとクロウさんだよ。そしてあの人たちが負けたことがあるのも2人だけだぜ」

 なるほど。

 つまりあの3人の力はほぼ同じくらいの強さ、ということになるだろう。

「いや一概にもそうは言えないんだな、これが」

 とコマクサさんが言った。

「体術だけで言えばキョクチクトウさんが誰よりも強い。そこに魔法が加わるとクロウさんが強くなる。さらに武器を入れればマリーさん。みたいな感じだ。状況にもよるんだろうと思うぜ」

「なるほど」

 マリーさんがあの強さなのだから、どちらにせよクロウさんもキョクチクトウさんも俺では相手にならないんだろうと思った。

「でもお前だって素質はあると思うぜ?お前に伝説の戦いを聞かせてやろう!」

 そう言ってコマクサさんたちが盛り上がり始めた。


 宴はそのまま次の日の朝まで続いた。


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