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Not Only But Also  作者: 加減乗除
第2章 護衛編
65/106

28話 関公面前舞大刀

意味。

関羽は大刀の名人でしたので、その面前で大刀を振り回すのは「身の程

知らず」という意味となります。


三国志。


―加―

「硬化、鋭化――――爪」

 シランは俺に爪で引っかこうとしてきた。


 咄嗟に短剣でその爪を庇う。


 パキン、と小気味良い音を立てた。


 俺の持っていた短剣が、爪の数、五等分に寸断された。


「なっ!?」

 コマクサと当たった程度じゃ折れないようには魔力を送っていたはずの剣が。


 斬られた。


「ありゃ? 意外に堅いな、その剣。もっと柔らかいかと思ったが」

 シランの爪は傷一つ無い。


「なんつー切れ味してやがる……」

 いや、よく考えればこれもありえる。


 おそらくあの爪は、この馬鹿でかい金庫を斬るためだろう。


「ウキ、さっさと片付けないと()()が来ちまうからな、行くぜ――――」

 シランは一気にこちらに迫ったかと思うと、その姿が一瞬で消えた。


「何!?」

 辺りを見渡すが、姿が無い。


 一瞬、辺りが暗くなる。


「上か!!」

 その瞬間、上からシランが爪を振りながら直下してきていた。


 それを下がってぎりぎりのところで避ける。


 服が一枚、切れた。


 着地したシランは止まることなく追撃を繰り返す。


 その攻撃は変幻自在だった。


 通常人間対人間ならば、大抵攻撃は左右に絞られる。

 何故なら、空中は身動きが取りづらく、敵の攻撃の餌食となるからだ。


 だが、猿とのキメラであるシランには、それが無い。


 上下左右、加えて猿のすばやい動き、そしておそらく一撃必殺の鋭い爪。


 その攻撃を見事に避けながらもオギは、少しづつダメージと疲労を負い始めていた。


 うききき、と変わらずシランは笑う。

 まだまだ余裕があるようだ。


「猿とのキメラである俺が言うのもなんだが、すばしっこいなぁ」

「どう、も!!」

「面倒だから」

 その言葉でシランはいったん間合いを広げる。


「猿舞、回転竜巻!!」

 ぐるりとシランが一回転したかと思うと、鋭い八本の斬撃が飛んできた。


「危ねぇ!!」

 オギはそれを紙一重でかわす。


 が。


 ゴトン。


 不意にオギの後ろで金属の音がする。


 まるで重たい金属が床に落ちたみたいな――――――。


 ある考えに至り、後ろを向くと。


 金庫が斬撃で斬られていた。


 斜めに、一直線に。


 どうやら今の斬撃、バラバラに撃っているように見えてよく考えられていたようだ。

 時間差で同じところに八発。

 それだけ撃たれれば斬れた、というわけか。


 と、ここまで考えて前を向くと、シランが消えている。


「ありがとさん」

 シランの声は後ろから。


 その右手には、黒く輝く美しいクリスタルが握られていた。


「じゃ」

 そして、シランは壁を丸く切り抜いた。


「待て!!」

 そうさけんではいても、この距離じゃあアイツのすばやさには敵わない。


 と、次の瞬間オギの横を誰かが通り過ぎた。


 あの速さ、アレンか?


 シランが出ようとした瞬間、クリスタルを持っていた右手が突っ張るように吊り上げられた。


 キキッ!? とシランも驚く。


 その間に左手も吊り上げられる。


 空中にはキラリと光る糸の様な物が。


「ワイヤー?」


 今度はシランが苦しみだす。

 見ると首にきらめきが集まっている。


「この、泥棒猫が。いや、泥棒猿かしら」

 その声は、アレンではない。


 というか、アレンに女装癖、ましてやメイド服を着る様な趣味は無いだろう。


 そう、目の前に居たのはメイドさんだった。


「まったく、せっかく警備を頼んだって言うのに。しっかりしてくれないかしら? まぁ、時間稼ぎくらいにはなったようだけれど」

 メイドさんは手を後ろにして何かを引っ張っているようだ。

 言わずもがな、あのワイヤーだろうけれど。

 メイドさんの手には、白い手袋。

 指が自分のワイヤーで切れないためだろう。


「あの……? 貴女は?」

 恐る恐る尋ねる。


「聞いていないかしら。私はアマリリス。しがないメイド長をやっているのだけれど」

 アマリリス、通称マリーさんは、鋭い目をして答えた。

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