27話 時は金なり
時間は大事に。
明日には死んでいる人がいますよ。
―除―
「・・・・・・」
見たところ開けられた気配は無い。
もしも俺が盗賊ならばわざわざ閉め直したりはしないだろうけれど・・・・・・。
ためしに金庫を引っ張ってみる。
ロックされている。
「・・・・・・」
確かめる方法が無い以上はこのまま守るしかない。
何者かが奪いに現れれば、それが答えだ。
ともすれば。
「外と連絡する手段でもあればな・・・・・・」
アレンやオレガノ、メリアが戦っている今、外がどんな様子かが分かればいいのだが。
そう思って、ふと俺が来た扉を見る。
「・・・・・・あれ?」
俺が来たとき、扉を肩でこじ開けた。
その扉が今は閉まっている。
俺が閉めた覚えは無い。
・・・・・・。
咄嗟、上を向いた。
「ばれた?」
うききき、とソイツは笑う。
姿は人・・・・・・に近いが、尻尾があるので猿と判断しよう。
猿のようなソイツは天井に張り付いていた。
「・・・・・・なんだコイツ!?」
俺が言ってすぐに天井から降り立った。
「お前・・・・・・何者だよ!!」
「分からん。オイラはそういう風に作られて無いから」
「作る?」
「オイラは猿と人の合成獣だよ」
キメラ・・・・・・!?
この世界の法律でキメラの創造は禁止されてはいない。
あらかじめ許可を取り、倫理を守った上でそのキメラの行動を制限するという事を守れば。
しかし、このキメラは2つの違反を犯している。
まず、キメラを1人で行動させてはならない。
これは動物である以上、野生に戻ってしまい生態系を壊してしまう可能性があるためだ。
が、もしかしたらこのキメラは案外この屋敷の何かかもしれないので、それは保留しよう。
最大の問題点。
倫理を守った範囲。
人と動物の合成の禁止だ。
これは簡単な話、『蟻』は殺してもかまわないが『人』は殺してはならない。のようなものに近い。
つまり、人間を上等としそのほかを下等種とするような考え方だ。俺自身あまり好んでは居ないが――そういう問題ではないのだ。
「お前・・・・・・何者だ!!」
俺はもう一度尋ねた。
「だからオイラは知らんよ。ただ、この屋敷の金庫を奪えと言われただけなのだ」
そう言ってソイツは俺に突っ込んでくる。
「オイラには名前が無い。だから、『シラン』だ!宜しくな!」
シランは、俺の頭に向かって掌を向けて叫んだ。
「呪文詠唱!」
「な――」
呪文使えるのかよ!!