24話 天は自ら助くる者を助く
これ、何話くらい続くんでしょうね。
61話目、個人的には素数で好きじゃないです。
―加―
「何だ今の声は!!」
「ちっ、悟られたか!?」
「仲間を呼ばれる前に始末するぞ!!」
黒服達が慌てて僕の元にやってくる。
「さて、これ全員を僕が相手するのか」
できればさっきの大声で救援に来て欲しかったんだけど、不思議なことに屋敷からは誰も出てこない。
「どこ行った!?」
「探せ!!」
「俺が探す!!。深き湖、水面に跳ねるは獲物の波紋。導け」
今のは探索タイプの魔法!?
「ここから1時の方向、距離は――――ごはっ!?」
ばれるなら仕方が無い。
アレンはそこから目にも留まらぬ速さで飛び出し、探索の魔法を出した男の腹を思い切り殴った。
「お前が、俺達の仲間をっ……!!」
「やっちまえ!!」
黒服たちもいっせいに囲んで魔法や体術を放とうとする。
が。
「遅い」
アレンは周りを取り囲んだ黒服全員の急所を的確に鋭く突いた。
十人ほどが同時に膝を突いて倒れる。
隠密師にとって、数は問題ではない。
むしろ、数が多いほうが数的有利という相手の隙を突く事ができ、有利になることが多々ある。
「意外に、脆い」
どうしたものかとアレンは周りを見渡す。
「お前ら、マンガで出てくる噛ませ犬じゃねぇんだから。たかがガキ一人にばったばったとやられてんじゃねぇよ」
その声は、後ろから聞こえてきた。
僕が。
後ろを取られた?
油断している間に、突く!!
アレンは後ろを向いたままバックステップのみで一気に迫り、正面を向こうと回転しながら相手を殴った。
振り向いてから殴りかかるより、このほうが相手の隙をつけたと思っての行動だった。
「おいおい、いきなり殴りかかるとはキレた少年だな」
だがその拳は、黒服たちを沈没させたその右拳は、易々と片手で止められていた。
まずい。
まずいまずいまずい!!
隠密師としての勘が、アレンの勘が、そう告げていた。
目の前にいたのは、やはり黒服。
けれど、ただの。先ほどまでの黒服ではない。
威圧感が、違う。
格が違う黒服は、アレンの右拳を握り締めたまま離さない。
むしろ、その右拳をさらに手で握り締めるようにして、壊しにかかっている。
「……」
「声の一つや二つくらい上げても良いだろうが」
その男は冷めた目をして、アレンの拳から手を離す。
アレンは自分の右拳を見ると、自分の指の爪が手のひらに突き刺さっており、指の骨はほとんどが脱臼、もしくは折れていた。
こいつから、離れる!!
常人が見れば瞬間移動とまで言われる速度。
逃げ切れる!!
アレンはその場から全力で撤退しようとする。
「逃がすわけ無いだろうが。これ以上任務果たせなかったら俺が死ぬっての」
しかし、アレンの願いは叶わない。
黒服はアレンの速度に追いついただけでは飽き足らず、その首を掴んで宙に浮かす。
「く、かはっ……」
気道を圧迫される。
「さて、色々と聞きたいことがあるんだがな。少年。まずは――――」
その聞きたいことを聞くことは出来なかった。
何故なら。
上から降ってきたある男の手が黒服の頭を鷲掴み、地面にめり込ませたからだった。
アレンはその勢いで地面に放り出された。
「ケホッ、ケホッ、。確か、あなたは……」
せきこみながらもその男の顔を見る。
「キョウチクトウだ。ま、ここまで掃除できたことは褒めてやる」
黒服の頭を地面にめり込ませたキョウチクトウは、アレンに微笑む。
「一つ、質問があります。余りにも、余りにも屋敷が静か過ぎるのですが……」
アレンはすぐに冷静になる。
「本当だ。外から見たら何にもおきてないように見えるな」
「外から見たら、ですか?」
「中はてんやわんやだぜ? おそらくこいつらは陽動だ。中にいる面子はお前の仲間でも相当苦戦、しかも負ける感じがする」
「……嫌な予測ですね」
「俺の勘は当たる。経験値がお前らと違うんでな」
苦い顔をする。
「本当は俺も中にいたかったんだがな」
「ここに助けに来たのも、勘ですか」
「その勘に助けられてんだぜ」
その時、ゴリと音がする。
「いきなりフェイスクラッシャーかますとは思えなかったな。いやまったく。しかもその後俺の事忘れてどうでも良い話しやがって。陽動にだって意地があるんだぜ? 正確には戦力の分断だが」
黒服は地面から頭を出す。
「ここは俺に任せてお前は屋敷のほうに行け」
「え、ですが……。この人はかなり強いですよ……」
「気にするな。俺はもっと強い」
「……分かりました」
「それくらいあのオギって少年も素直だと俺も面白いんだけどねぇ。君、あのオギ少年の友達だろう? 普段のオギ少年は―――――ーっていねぇ!!」
どうやらアレンは会話中に屋敷に向かったようだ。
「おいおい、俺が行かすとでも!!」
駆け出そうとした黒服の前に、キョウチクトウが足音をダンッと響かせながら立ちはだかる。
「邪魔する気か?」
「ここを通りたかったら、俺を倒してからいきな」
腕を組んで黒服の前に立つ。
その気迫は、黒服にも負けていない。
「なるほどな。さっきの少年よりは面白そうだ」
「俺も久しぶりにアンタみたいなレベルの人に会ったよ。さぁ、顔と地面をディープキスさせてやるよ」
庭園で死闘が、始まった。