16話 過ちては則ち改むるに憚る事勿れ
こじせーごです。
通算53話。
意外に頑張ってます。
感想もお待ちしてたりします。
―加―
さて、時間を戻そう。
今俺達はクロウさんに警備についての話を聞いていた。
仕事の話、ということでアルメリアの友人であるところのシオンさんも落ち着いて静かにしている。
「今回あなた方にしていただきたい仕事は警備です。そこまでは伝わっていますね?」
確かにそう聞いた。
「では、こちらに着いて来て下さい」
そういうとクロウさんは俺達を連れて通路の一番奥の部屋に来た。
その部屋はある一点を除けばまったく普通の部屋だった。
ある一点。
鉛色で重厚そうな巨大な金庫を除けば。
「この中には、とある宝石が入っております。皆さんには、この宝石を警護していただきたいのです」
「宝石……、ですか?」
聞いたのはメリアだった。
「えぇ。世の中でも類を見ない黒く輝くクリスタルです。私もこの扉が開けられたところを見たことが無いので詳しくは分かりませんが、相当に美しいようです」
そう語るクロウさんの声は少し熱っぽかった気がする。
……そりゃ見たことも無いすごい綺麗な宝石を語るならそうなるか。
「で、その宝石をクロウがいない数日警備して欲しいって訳。分かった? メリア」
シオンさんはどうやら久しぶりにあった幼馴染と早く喋りたくてうずうずしていたようだ。
「えぇ。分かったけれど、こういうお屋敷の警備ってのはクロウさんがいなくてもそれなりに整っているはずよ? それに、私達だって始めて聞いた宝石なんかをクロウさんがいないときに狙ってくるような人がいるのかしら?」
メリアが腑に落ちない点を上げる。
言われてみれば納得だが、こんなことに気がつけるメリアは、やっぱり頭の出来が違うんだと思う。
「もちろん、この屋敷の警備は整っています。最終防衛ラインが私というだけです。それにこの金庫もただの金庫じゃなく、ある程度の魔法であれば消去できる高度な魔法陣が組み込まれておりますしね」
クロウさんがメリアの質問に答える。
やっぱりクロウさんが最終防衛ラインではあるんだな。
だが、クロウさんはその後にですが、と続けた。
「ですが、どうやらよくない噂を耳にしたのです。『この屋敷にある黒水晶が何者かに狙われている』というものです。先ほどメリアさんが言った様に、黒水晶のことはあまり公言されてないのにもかかわらず」
「私も野暮用とは言いましたが、外れられる用事という訳でもありません。という訳で、あなた方を雇わせてもらった、というわけです。本来この屋敷を守り、お嬢様が安全に暮らしていただけるように全力を尽くさなければならないはずの執事、それも執事長がこのようなタイミングで外に出てしまうこと、お許しください」
クロウさんはシオンさんに片膝をつき深々と頭を下げる。
「何度も聞いたから大丈夫よ。頭を上げて。それに、私の幼馴染も来てくれたしね」
シオンさんは笑顔でメリアに手を振った。