13話 宝の持ち腐れ
今回は簡単な諺です。
総計五十話目になります。
―減―
屋敷の中は外見と同じく、とても広かった。人間が生活するのにこんなに広い空間は必要ないと思う。
前を滑るように、それでいて速く歩くクロウさんに俺達が続く。
しばらく歩き、俺達の目の前にあったのはおよそ俺の身長の二倍はあるであろう巨大な扉だった。
「こちらが、お嬢様のお部屋になります。直接の依頼主はお嬢様ですので、くわしい依頼内容はお嬢様の御前でお話致します」
クロウさんがその扉を片手で軽く押すと、扉は重さが無いがごとき軽々しさでギイ……と開いた。
もしかするとこの人、万能なのではないのだろうか。
ここまでくる途中の廊下でも一般人がその人生の中では見ることはないであろう使用人であったりメイドさんであったりを何人か見かけたが、その人たちは客人の俺達だけでなく、その前を歩くクロウさんにも挨拶をしていた。
……うわあ、絶対この人敵に回したくねえ。
クロウさんに続いて、俺達も部屋に入る。
そこには、大きな円卓でティータイムを過ごしている――ドレスっぽいのを着た――少女が居た。
「こちらが、当屋敷の持ち主にして、私のお仕えする御方、シオン・ヒュウガスラ・アカシアヌルデ様です」
「ど、どうも……」
俺が挨拶をすると、少女はゆっくりとこちらを向き、
まず俺を見て、
オレガノを見て、
アレンを見て、
メリアを見た。
そして、急にぱあっと笑顔になった。何故だ。
「アルメリア!!」
そして俺の幼馴染の名前を呼びながら立ち上がった。何故だ。
そして、こちらに駆けよってきた。
「アルメリア! アルメリア・フェアリ・エーデルワイスじゃない! 久しぶりね!」
「め、メリア……」
俺は横を向いて幼馴染の反応を確認する。
と、
「シオン!! やっぱりね、依頼を見たときにそうじゃないかと思っていたのよ。でもまさか、あなた私有の屋敷に来ることになるとはね」
俺の秀才なる幼馴染は、笑っていらっしゃった。
……ここまでのやり取りでもうおわかりだろう。
この屋敷の主人、シオンさんは俺の幼馴染、アルメリアの友人だった。
――アレンの持ってきた依頼は、ある屋敷を数日間警備することだった。
それがとてつもないお金持ちの家系の人が持つ屋敷のうちの一つらしく、報酬、すなわち習得単位の量も多いのだった。
定員は五人。四人以上と追記してあったため、とりあえず俺の身近でさっさと集まってかつ俺に協力してくれそうな人を集めた結果、この編成になったのである。