5話 テスト終了、そしてこの世界は物語を欲す。
どうも、加減乗除です。
明日が第三日曜日とすっかり忘れていて急いで散髪に行っていました。
五話目、話を加えて行きましょう。
―加―
前の訓練試合が終わって三日後。
俺は部屋に戻って夕暮れを窓から眺めていた。
「ふぅ……」
俺にはもうこんなもん必要ない。
「安らかに自然に帰るといい。お前も元は自然から出来たものだ」
「何悟りきった笑顔でテスト用紙を捨てようとしてんだよ」
気がつくと後ろにアレンが立っていた。
「気配消して後ろに立つの本当やめてくれ、アレン」
「悪い悪い。いつもの癖だ」
本当にこいつが隠密師だと実感させられる。
「んで、何点だったんだよ――――――、プッ」
「今笑ったよな!? っていうか人のテスト勝手に見るな!!」
「いやでもこの点数は……、プッ」
「手前も隠密師なら感情ぐらい殺せやぁぁぁ!!!」
そうして今まさに男のプライドを賭けた戦いが行われようとしていた時だった。
コンコンと扉をノックする音が。
「オギー、テストどうだったの?」
「お前も笑いに来たのかぁぁ!!」
「……、よほど悪かったのね……。色々と崩壊してるわよ」
部屋に入ってきたのは成績優秀な幼馴染、メリアだ。
両手に紙袋を抱えていた。
「ま、追試で何とか頑張れってことだな」
「どう頑張ればこんな点数とれるのよ」
「お前ら成績が良いからってぼろくそに言いやがって……!」
実はアレンもそれなりに成績は良い方だ。
ただ隠密師という学科上なのか、わざと点数を落としているらしい。
こんなことで目立ちたくない、ということだろうか。
「とにかくだ。メリアは何の用があって俺の部屋まで来たんだよ」
「そうそう、これを渡そうと思って」
メリアはそういうと紙袋をごそごそとあさりだした。
「はい、探してた本。たまたま売ってたから買ってきたわよ」
「お、ありがとよ! これこれ、探してたんだよな。“ゴルディアンの家計簿Ⅳ”」
「まーた訳の分からない本を……」
「うっせ、お前もⅠから読んでみ」
本当に面白いんだから。
キャラクターとか話の作り方とか。
「おやおや、あんた達また騒いでんのかい?」
その時、今度はノックなどなくいきなりドアが開けられた。
「あ、寮長先生。こんにちわ」
「どうも」
目の前に現れたのは寮長ことミモザさん。学園七不思議のひとつ、最強の番人なんて名で乗っているほどの女性なのだが、その穏やかな喋りからはとても想像できない。
というか七不思議自体が眉唾物なんだが。
そして気がつくとアレンが消えていた。
寮長くらい気を許してもいいんじゃなかろうか。
「どうして寮長がここに?」
「そうそう。オギ君。ちょっとお願い事があってねぇ」
「寮長の依頼、ですか……?」
なかなか珍しい。
「ちょっと救護科から欲しい材料があるそうさね。それを取って来て欲しいんだと」
「何でそれを俺に頼むんですか」
「ことによっちゃあ、追試を免除してやっても良い」
「ありがたくお受けします」
採集くらいで追試が免除されるなら、ラッキーだ。
下手すりゃ鬼の補習まで行きかねないからな……。
「ところで、何を取ってくればいいんですか?」
「繭茸っていうキノコさ。聞いたことあるかい? センロッポンっていう谷にあるんだよ。どうやら救護科で使うもんらしいんだが、在庫が切れちまって、緊急に必要ということさね。大丈夫、あの辺は特に危険な奴等もおらん、楽な任務のはず」
「そうですか。私も言って良いですか?」
「学年次席のメリアちゃんが着いて行ってくれるんなら百人力さね。じゃあ、二人で行ってお行き。依頼扱いで休みにしておいてあげるから。詳しい情報とかは今日中に支給するから、明日の朝にでも出発すればいいさ」
という訳で俺とメリアは、訳のわからない繭茸なるキノコを探しに行くことになった。
「しかしまぁ、キノコ採集なんてもんで追試を免除してくれるもんか。ちょっとばかし、きな臭そうな気がせんでもない」
アレンは寮長が部屋から出て行った後、一人呟いた。
新章突入、です!!