12話 郷に入っては郷に従え
なんとなくですが。
加のときだけ諺が簡単な気がします。
難しいのわかんなーい。
―加―
「でかいな」「でかいね」「ひゅぅ♪」「……大きい」
俺とメリアとアレンとオレガノはその建物を前にして同じ感想を抱いていた。
目の前には巨大な門。
その奥には噴水のある庭園が見え、更にその向こうに白いお屋敷が見えた。
お屋敷もそれなりに距離を置いてみているはずなのだが、それでも存在感は違う。
高級感というものだろうか、気品というのものだろうか。
俺達四人は今、長期型のA級任務のために学園から少しはなれたあるお屋敷の前に立っていた。
未だに任務の内容は極秘。
一体何の仕事を任されるんだろうか。
「普通に豪邸だな」「もう凄いくらい豪邸ね」「驚きなぐらい豪邸だな」「……でっかいお屋敷」
いい加減飽きてきた繰り返しをやめて、とりあえず門をくぐろうとしたときに、アレンが歩を止めた。
「で、いい加減僕達を中に入れて欲しいな」
そして急に何かを言い出した。
アレンを除く俺達3人がポカンとしていると、急に。
背後から。
何も無かった空間から人が現れた。
身長は180cm位の高さで高く、服は黒く布地が腰から膝くらいまで伸びている燕尾服を着ていて、サングラスをかけていた。
「合格だ。この程度の気配に気づけないようでは、警護など不可能だからな」
その人はサングラスをとると前に出て門を開け始めた。
目はすらりと細長い目だった。
「試していたんですか?」
アレンは驚いている俺達を尻目に話を進める。
「気分を害したのであれば謝りましょう。ですが、流石に学生に警護を任せるのにはいささか不安がありましてね」
急に口調が先ほどのような威嚇するものではなく、恭しいものになり、それくらいは分かってください、といった風に溜息をつく。
「ところで、一体あなたは?」
あっけにとられていた3人の中で、メリアが謎の人に話しかけた。
「私ですか。私はこのお屋敷で執事、正確には執事長をしているクローバーと申します。気軽にクロウとお呼びください」
非常にお呼びにくい。
「では、お嬢様のお屋敷を案内しましょう」
クロウさんはそういうと門を開け、中へと促した。