9話 臍を噛む
46話目になりますかね。
「ほぞをかむ」。諺の意味は、後悔すること。
―減―
「――――と、いうわけさ。後は、二人にお礼を言って、物凄い速さで走るオレガノを追いかけて、ゴーレムとの戦闘に入ったわけさ」
アレンはそう言うと、眠いのだろうか、あくびをしながら部屋の中へ戻っていく。
「それは大変だったな。お疲れさん」
「今言われてもね……」
俺はベランダで立ったまま、アレンに話しかける。
「しかし、何者だったんだろうな、狐野郎の言ってた……なんだっけ」
「調教師のことかい?」
「ああ、それだ。学院から寝返ったんだろ? 別に得なことがあるわけでもないのに」
「そんなこと、僕には分からないよ」
「だよなあ……」
学院と暗に敵対している組織なんてもの、片手じゃ数えきれないくらいあるからな。
どんな条件を突き付けられたにせよ、学院を裏切ったとなると、ただでは済まない。
「それほどの覚悟を持たせる何かがあったんだろうね」
アレンが考え込むようにベッドに伏せる。
何が狙いなのか、はたまた気まぐれだったか。
「わからないな、全く」
空を見上げれば、青白く光る星の群れ。
明日には戦士科棟の修理も終了するだろう。
ようやく、いつもの日々が戻ってくるわけだ。
別に俺は戦闘狂ではない。ただ、怠惰なだけだ。
「とりあえず、眠ろうか」
「そう、だな……」
俺も自分のベッドに倒れ伏す。
「アレン、風呂は?」
「まだだけど?」
「あ、そう……」
―――――――――――――――――――。
翌日。
俺はいつもの通りに目を覚ました。
アレンはいない、もう出て行ったようだ。
「さて、と……」
顔を洗い、歯を磨き、刃を磨く。
このくらいのことは習慣づけている。さぼったりはしない。
さて、今日はどうしよう。
依頼か、試合か、授業か……。
そう思った時だった。
「オギ!!」
急に部屋のドアが乱暴にこじ開けられた。
その先には、急いで来たのか、制服を乱れさせているメリア。
しっかりしろよ。ただでさえお前、可愛い方なんだから。
才色兼備の隣にいる俺の身にもなってくれ。
「オギ、大変よ!」
「どうしたんだ?」
またゴーレムでも現れたか、悪運強い学院だな。毎度毎度思うけれど。
「これを見なさい」
そういってメリアは、一枚の紙を俺の目の前に突き付けた。
「? どれどれ……」
えーっと、『緊急 情報操作による誤認識のため、学院内の記号表記の情報が間違っているものがあります。以下の情報に誤りがありました。学院側での対処、及びサポートに伴い、正規の情報に基づいた行動をしてください』
「……何?」
「その下、生徒の成績に関する誤情報のところよ!」
なになに……、俺の名前と、学年、間違っていた情報は……
「た、単位の数字が間違っていたあ!?」
マジか!? しっかりしてくれよ学院さんよ。
しかも正規の情報だと、俺の単位は足りてない。
「そう。一週間後には単位進級検査があるわ。それまでにその足りてない単位を稼いでおかないと、あなた……落ちるわよ」
「おいおい……」
冗談だろ!?