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2話 艱難汝を玉にす
加減乗除 39話
何書いていいやら
ー乗ー
アレンとオレガノは深い森の中にいた。昼下がりの森は薄暗く、何とは無しに不気味なものを感じさせた。
前日の雨に濡れた木々の葉から一滴の露が零れ落ち、アレンの頬で弾かれた。
「……オレガノ。藁人形でも打ちに行くのか?」
「違う……」
アレンにはオレガノに何の依頼をされたかは分かっている。
呪術の道具の調達に行く彼女のボディガード。
分かってはいるが、薄闇の中の大木を見つける度に不安になってしまうのだ。
やがて、森の奥……進んでいる先に光が見えた。
森に入って二時間ぶりに見る日の光だった。
「もうすぐ着く…………」目の前にあったブッシュを掻き分けるオレガノ。少しテンションが上がっているように見える。