27話 世界の秩序は静かに乱れる。
加減乗除です。27話。
初めての試み。2つの部位は共存できるのか。
―乗除―
沈黙。静寂。無言。空間を包んでいる空気は熱気に凄まじいスピードで包まれていく。
「・・・・・・」
俺も含めて相手も動かない。これだけ殺気を放っているというのに、サラマンダーは微動だにしない。調教師はその生物の特性すらも操ることができる、という事だろう。
つまりサラマンダーは関係ない。俺とカンパネルラの駆け引きという事になる。
既に周囲の温度はかなり高くなってしまっている。サラマンダーの準備は完璧だ。
頭部、頬、顎・・・・・・汗が各所を伝っていく感覚。心地よい感覚ではないが、そうも言っていられない。むしろこの状況下ではそんなこと気にならないくらいだ。
人には向いていない戦況ではあるが、俄然やる気がでる。断崖絶壁、背水の陣・・・・・・それらが勝負手の正念場だ。
ライフルを持つ手に力を込める。手汗で滑りそうだが、しっかりと掴む。
そして引き金に指をあて、準備は完了。
顎まで伝ってきた汗が一滴、地面に向かって落ちる。
何の音もしなかった空間に、ピチョン、という小さな音がした。
空間の秩序は狂う。
引き金を引いた。
出来た。
―乗除―