26話 狐と使役とこの世界。
そうです加減乗除です。
26話です。
いったいどうなっていやがる……!?
赤く光るサラマンダーの瞳を逆に睨みつけながら、ゼロは持っていたライフルを再装填する。
「てめえ……。使役魔法の使い手か。しかもその服、うちの学院の……」
「そうだよ」
カンパネルラと名乗った男は、へらへらというか、余裕たっぷりの表情でこちらに向かって笑みを浮かべていた。
……こいつ、学院の魔法結界が地下に及んでいないことを知っているのか。
学院の制服を着ていながら、こんなことをするのは……。
「……潜入者か……!」
この学院の存在意義は、この世界で生き抜くため、戦っていくために必要なものを教えること、世に貢献できる人材を育てることにある。
だからといって、この大陸は治安がよく、正義が必ず勝つという世界ではない。魔物、竜族など、それらを自主的に狩って生きる者も多い。彼らは彼らでコミュニティーを作り、俗に言う組織を作っているのだ。中には、非合法に裏社会を回っている者たちもいる。
戦士科や狙撃科、魔術師科の生徒たちは、そういう連中と獲物が被ることもままある。そういう意味で出来の良い生徒は恨みを買うことも多いのだ。
だがまさか、こういう手を使うとは……。
「……へえ。評価1の癖に頭もいいのか。てっきりただの単細胞なんだと思っていたよ、フォックス・F・ゼロシルバー」
しかもお前の情報も把握済みか。
「推理能力もなかなか。引き込むのは君にしておけばよかったかな。まあ、過ぎたことだからいいけれどもね」
何のことだ。
「行動が問題なんだね、迂闊だった。しかし、ここまで追ってくることも予想外だったよ。実は逃走途中だったんだけれど」
「てめえ、ふざけんなよ。俺を相手にしたことを後悔させてやる……」
頭にふつふつと怒りが灯る。舐めた口ききやがって。
「後、僕は別にスパイじゃあないよ。引き込まれたのさ」
カンパネルラが笑みを浮かべる。
「引き込まれた……だと?」
「そう。それも、とても魅力的な条件でね。僕のこの、使役魔法に特化した魔力を最大限活用できる、素晴らしい誘いだった。この学院を裏切ってもお釣りがくるくらいのね」
「ふざけんなクソ野郎。逃げられると思ってんのか」
「まあね」
そう言うと、カンパネルラはサラマンダーの背から軽い身のこなしで地面に着地した。
「さあ、時間も迫っていることだし。この子には君の相手をしてもらうよ」
「チッ……」
周囲の温度が上がっていく。
完全にこの空間はサラマンダーの狩り場になってしまったようだ。
だが、負ける気は、無い。
銃を構え直す。