2話 ただこの世界、思うようには回らない。
どうも、加減乗除です。
二話目の投稿になります。
―減―
ただ俺は、自分のことをつらつらと語るのはあまり得意な方じゃない。
そこで、とりあえず今俺の隣でドリンクを飲んでいる(救護科の連中が調合した何とかポーションと言う奴らしい。胡散臭いから俺は飲まないが。)こいつについて話そうと思う。
彼女の名前はアルメリア。名字とミドルネームは……覚え切れていない。
……いや、言い訳するつもりはないけど本当に長いのだ。小さい頃から覚えては筆記テストの勉強をして忘れ、覚えては忘れ、を繰り返している。
「何よ、人の顔ばかり見て。変態趣味にでも目覚めたのかしら?」
「ねえよ。それよりメリア、また(大)変な依頼を俺の知らない間に受けてないだろうな。また竜種の卵を探しに行ったりみたいなのを受けるのだけはやめてくれよ」
「わかってるわよ。後、わたしは明日訓練試合に出るのは無理だから。街に出る用事があるの」
「へいへい分かりましたよ」
ちなみにこいつ、学年次席の優等生である。所属学科は魔術師。五段階評価でぶっちぎりの五だ。
……俺? 対して俺は一応戦士科に所属してはいるが、評価は二である。さあ、鼻で笑え。
単位は……まあ、心お優しい幼馴染に同行することでどうにか足りている感じだ。
……そう、俺とアルメリアは俗に言う幼馴染なのだ。うん、正直辛いね、優秀な奴が幼馴染って。格差を時折感じるよ。
友人にもよく言われるが、本当にメリアには頭が上がらないのだ。回るのは減らず口くらいなもんである。
ホールからしばらく歩くと、でかい建物が二つ見えてきた。
西側が女子寮で、東側が男子寮である。
分かれ道で、
「明日、楽しんでこいよ」
「……分かってるわよ。私の心配より、明後日の魔術における四元素と発動基本原理に関する全学科共通筆記テストの結果、楽しみにしてるから」
「うっ……」
「あれだけ教えたのに、まさか再テストには、ならないでしょうねえ?」
「あ、ははは……。それじゃっ!」
敵前逃亡。いや、戦略的撤退か。とにかく、俺はそれ以上の追及を避けるため、男子寮の入口へと駆けて行った。
――――聖エンテルミナ学院、男子寮1102号室。
何と言うのか、この学院、生徒の多さだけは随一なのだ。
この寮の全ての部屋も二人部屋なのである。
「ただいま」
「おう、お帰り、オギ」
そう言って、俺のルームメイトであるアレンが答える。
また俺とは違う人の話になるが、アレンは全学科で最も人数の少なく、最も情報の少ない、隠密師のうちの一人なのだ。
そして、今彼が言ったのが俺の名前の頭をとったニックネーム、オギである。