13話 燃え盛るように怒りを覚えたこの世界。
加減乗除の13話目にして。
遂にバトルが始まりました。
―加―
「お前がこの俺に勝てるわけねーだろこのボケが!!」
「狐は黙ることも知らないのか?」
「ってめ……!!」
と、罵詈雑言を繰り広げながらササガキ西部の森、タズナギに到着した。
ここは昔からよく神聖な森として有名だったはずだが、その状況は悲惨なものだった。
木が燃え盛っており、神聖とは程遠い様相を見せていたのだ。
「ま、森にサラマンデルっていったら仕方がないが、ちと暴れすぎな気もするな……」
「どうする? 今からでもしっぽ巻いて逃げるか?」
俺の呟きにいちいちゼロは反応する。
「その言葉、そっくり返すぜ」
「やれるもんならな」
森に入ると、やはり燃えカスとなった木々がいくつか見られる。
そうして歩いていると、赤い光がちらほらと見え始めた。
「出たか……」
今のはサラマンデルの目の色だ。
ということは、ミッションスタートと言う事だ。
いつの間にかゼロがいなくなっている。
おそらく狙撃用の場所でも設定したのだろう。
「kishaaaa!!」
そんな鳴き声が聞こえたかと思うと、赤い光のうちの一匹――――――サラマンデルがこっちに飛び掛ってきた。
「言っとくけど、手前には一匹もやらねぇからな!!」
聞こえているかいないかは別だが。
「おりゃあ!!」
飛び掛ってきたサラマンデルは鋭い爪をこちらに見せて切り裂こうとしてきたが、それを横にいなし、そして一気に片手に持っていた長剣で斬る。
「Gihii!!」
そんな声を出して一匹のサラマンデルが地に沈む。
すると、いつの間にか周りに広がっていた赤い光がゆらゆらと動き始めた。
どうやら今の一匹は試金石のような役割だったらしい。どこかのことわざで言えば『最初のペンギン』、いや、『最初のサラマンデル』か?
お前も可哀想にな。
「Giiiiiiiiii!!」
どうしたものかと考えている間に、甲高い、というよりは何かを引き裂いたような音が辺りに木霊した。
「Gyoooooo!!」
そんな叫び声を上げて、三匹が同時に右、左、正面から襲い掛かってきた。
「まずは、右!!」
一番早く飛んできた右のサラマンデルに剣を振るう。
「そして、左!!」
一体を切り伏せたすぐ後に、剣の持ち方を逆手にして右を向いた状態から後ろに刺す。
「最後の一匹!!」
後ろ(今では右に見える)サラマンデルには、逆手で持っていた剣を落とし、切り裂こうとしてくる鋭い爪よりも早く顔面に肘鉄を叩き込んだ。
『Gyaaaahiiiii!!』
怪物じみた声を上げてサラマンデルがどんどんと沈む。
『Gyooooooooooooooo!!』
すると、潜んでいるサラマンデルたちは三匹が飛び出してきたときより大きな声を出してきた。
そして、360度から襲い掛かってきた。
「休ませてもくれないか……!?」
総勢七匹。
息つく暇などあたえられないが、それでも着実に一匹一匹倒していく。
が。
「ヤバッ……!!」
オギはそうやって飛び掛ってきているサラマンデルに夢中で、後ろの木から飛び掛って来る一匹に気がつかなかった。
鋭い爪が迫ってくるが、対処が出来ない。
万事休すか――――――――、とオギが思ったとき奇跡が起こった。
「Guhii!!」
そんな間抜けな声を出して今にもオギに迫っていたサラマンデルが横に吹っ飛んだ。
「!?」
オギも驚きを隠せない。
『Gui?』
サラマンデルもそのようだ。
と、一瞬全員の動きが止まった瞬間に、今度はオギの周りで戦っていた三匹のサラマンデルが次々と吹っ飛んでいく。
「まさか……」
その中の一匹のサラマンデルをみて、あることに気がついた。
「狙撃か……!?」
オギがそう気がついたときには、周りにいたサラマンデルがポンポンと飛んでいく。
「まったく、腕だけは本当にむかつくな」
見えないあの男に対して怒りを露わにしていると、その瞬間に銃弾が頬のすぐ横を通っていった。
「……!? あの野郎!!」
それが嫌がらせだとすぐに気がつくと、また一層むかついた。