第五幕:知性を磨く事件
やあ、君。僕はホームズだ。そして、ホームズを愛するシャーロキアンの一人だ。
なのにーーシャーロック・ホームズと名乗っている。
第四幕では、僕がホームズと名乗る前の話を奥さまに話して聞かせた。
僕はーーまるで天使の前で話をしているアダムのような気がした。
だがーー1906年。
奥さまーールイーズが死んだ。
サリー州ハインドヘッドの屋敷の中。
長い闘病の末に。
ーー僕は彼女の葬式には出なかった。
なぜかって?
彼女は僕の物語を抱えて、
天使になってーー地上から飛び立った。
ーーそう信じたかったかもしれない。
屋敷の裏口で、感傷に浸っていると、
帽子ホームズが僕の目の前に現れた。
日が昇っている時だ。
ーー彼はーー僕に群れに戻るように言ったんだ。
「おい、君。あの骸骨女は天に召されたんだ。キレイサッパリだ。どうやってコナンに、ホームズの作品を書かせればーーどうすりゃいいんだーー」とも言ってた。
だから、僕は彼に言ってやった。
「コナン・ドイルには、気をつけるんだな。彼はルイーザのために、僕らのイタズラを見逃してたんだ。
彼女がいなくなった今ーー僕らはーー、シャーロキアンは訴訟される......」とね。
すると彼は、普段のニヤニヤを止めた。
「そりゃあ、まずいぜ。おい、君、あの野郎の興味をなんとか、ボクらから逸らしてくれーー頼む」とまで言ってた。僕は黙ってニヤついてたよ......。
さてとーーここは1906年頃のイギリスだ。僕はサリー州ハインドヘッドの屋敷にいた。
この屋敷は赤レンガ造りの田舎家屋で、高地に建てられていた。
居間は訪れる客たちに評判がよく、
南向きの大きな窓が太陽の光を取り込み、壁は温かみのある木板で囲まれていた。
部屋の中央では、バイオリンを演奏している中年男性が立っていた。茶色い短髪には白髪混じり、灰色の髭が口元を隠していて、体はがっしりしていた。ブラウンの紳士服を着て、気持ち良さげにしていた。
彼がコナン・ドイルなんだ。
「どうだい、ホームズ。
私のバイオリンの腕は?
悲しみを表現している。
妻を失ったばかりの男による演奏だ」
僕は——とりあえず褒めたたえた。神を崇めるようにね。実際、彼はシャーロック・ホームズを作った神だ。
それにーー彼女の愛した夫を侮辱してはならないと思った。
だけどーー!
ーーガマンができるだろうか。
彼を張り倒して、僕が彼女を愛していたんだとーー言わない自信がない。
ーー彼には彼の都合があった。
1905年頃のことだ。彼は別の女と恋愛関係にあった。プラトニックだと主張してたがーー誰が信じるんだ。
ーー彼の妻のルイーザがいなくなった後、近い将来ーーコナン・ドイルは、相手の女と結婚するかもしれない。
僕はーーそれが気に入らなかった。
ソファの端に座ってた。
落ち着かなかったーー。まだ、あの部屋には彼女の面影が残っている気がした。
それなのに彼は、居間でバイオリンを演奏しだしてるんだ。
ーー僕の前で。
「コナン先生、さ、さすがです。ぼ、ボク、無教養ですから、ば、バイオリンなんて触ってもーーひ、弾けないです」と吃りながら僕は彼を褒めてた。
彼は演奏を止めて、微笑んだ。
「君!私から推理の技術だけじゃなく、演奏の腕前も学びたまえ、ははは!」
ーーそろそろかな。
気分が良さそうにしている彼に、話を切り出した。
「せ、先生。新聞を見たんですけど、グレイト・ワーリーってとこで、ふ、不可解な事件が、お、起こったようですーー」
僕は吃りながら、彼に事件があることを伝えた。
「なに?ーーこのマヌケ!そういう事は早く言えーー事件のにおいがする。準備はできてるか、ホームズ?」と彼は不機嫌そうに言った。
「す、すみません......、まだ、新聞読んだだけでーー」と僕は青くなった。
なぜかって?
彼に事件の情報を話しすぎたかもしれないと不安に思ったから。
もっとバカっぽく、無害にやらなきゃーー。
ーーだが、気にしすぎだった。
彼は、それを聞いて笑った。
心の底からーーそして彼は口を開いた。
「私は準備ができている!」
(こうして第五幕はバイオリンで幕を閉じる。)




