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シャーロキアンのホームズⅡ〜名探偵になりたい男の物語〜  作者: ヨハン•G•ファウスト


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4/13

第四幕:彼女は天使になったんだーー

やあ、君。僕はホームズだ。そして、ホームズを愛するシャーロキアンの一人だ。

なのにーーシャーロック・ホームズと名乗っている。


第三幕では、シャーロキアンの存亡の危機を感じた僕は、ルイーザーー奥さまと親しくなった。

孤独の中でーー。

彼女の部屋の中でーー。


......彼女との話は面白かった。

どう面白かったかは、

僕らにも分かってなかったとおもう。

くだらない話やら、

哲学的な話までね。

もちろん、彼女の体調がいい時に。

彼女の雰囲気はーーどことなく、ふっくらしてきた気がしたんだ。


さて数日経ってた。

ホームズの作品について、彼女に聞いてみた。彼女なら、コナン・ドイルにホームズを書かせられるかもしれない。

「アーサーは、歴史の本を書きたいのよ。ホームズさんのこと、嫌いじゃないけどーーアーサーの書きたいようにさせたいわーー」と彼女から言われた。彼女はーー本当に辛そうにしてた。

僕は、その話をしないようにした。

彼女の重荷にならないようにーー。


ある日、コナン・ドイルに呼び出された。屋敷から叩き出されるのかと思ったが、そんなことはなかった。


彼はホームズの新作のアイデアを、思いついたんだ。

このアイデアと共に、ホームズの推理を教えてくれるのかと期待した。


「ホームズ。君、今回のホームズの新作アイデアを聞くと驚くぞーー」

僕は大作家のアイデア出しを見たことがなかった。

しかも、シャーロック・ホームズの新作ーーすごく胸が膨らんだ。

「舞台はーーそう宇宙だ」


ーー宇宙だって?

期待なんて、一瞬のうちに砕かれた。

「う、宇宙?」と不満げに聞き返した。

「そうだ。そこは、ホームズの推理力も、観察力もまったく役に立たないーー」

「や、役にーーた、立たない?」

「そうとも!彼は宇宙に放り出される。彼は傲慢さを改めて、英国に忠実な清廉潔白な男に生まれ変わりーー地球に帰還するーー壮大な精神的な物語になるーー」

「わ、ワトソンは?」

「なに?」

「ワトソンもーー、いっ、一緒に宇宙にーーほ、ほう、放り出されるんですか?」

「彼は開業医を続けている。

宇宙に放り出される必要はない!」

彼は宣言するように両手をあげた。

「暗黒の(そら)に漂い、ヤツは無力を噛み締めて悔い改める。これが新作だ。そして、この新生ホームズが、歴史を探求するんだ。

素晴らしいとは思わないか? そして歴史の中で、霊界のーー」


僕は顔に泥団子をぶつけられたような、やるせない気分を感じた。


もう頭の中がこんがらがった。

そのままの足で、奥さまの部屋に戻った。

なぜかって?

一人の部屋は息苦しかった。

二人で話題を交わしあう楽しさを味わいたかった。

僕は彼女の手を握り、二人で囁くように話した。


「ーーホームズ。あなたの事を聞かせてくれるかしら?

虚構としてのあなたではなく

ーー前のあなた。本当のーーね」

「僕のーーですか?」と唾を呑んだ。

「ええ。あなたが、過去を思い出すたびにーー苦しそうにしてたから。」

「僕にとって、過去は消してしまいたいんです。もし触れるなら、引き裂きたいぐらいーー」彼女の手が僕の頬を母のように撫でた。

「ねえ、ホームズ。もうすぐーー私は遠くへ行くの。どこかーーどこかねーー、大切な人に会えるかもーー会えないかもーーでも、すごく遠くよ。」

彼女は歌うように繰り返した。

「あなたの物語を抱えて、天使のようにーー飛んでいくわーー」

僕は悲しくなった。

そうして、彼女に最初から話したんだ。


「ーーやあ、君。僕はホームズだ。そして、ホームズを愛するシャーロキアンの一人だ。

なのにーーシャーロック・ホームズと名乗っている。

この物語は僕がなぜホームズにならなきゃいけなくなったかを話す。

ーーそういう物語なんだ。


1900年頃の事だ。イギリスのロンドン。霧の都にて僕は生きていた。

そこは、まるで本物のホームズが出そうな都市だった。昼は石畳と歴史ある建物に囲まれ、夜の闇に霧で異界のごとき不気味さで僕を誘うーー」


時は流れていくーー僕は夢中になって語った。


(こうして、第四幕は虚構ホームズの誕生により幕を閉じる。)


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