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シャーロキアンのホームズⅡ〜名探偵になりたい男の物語〜  作者: 語り部ファウスト


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第十六幕:厄介な知性の塊

やあ、君。僕はホームズだ。そして、ホームズを愛するシャーロキアンの一人だ。

なのにーーシャーロック・ホームズと名乗っている。


第十五幕では、コナン・ドイルと警察の関係に一切の変化もなかった。

僕は作家と警官の二つの目に挟まれて絶望するしかできなかった。

僕に何ができた?


コナン・ドイルがやった事は警察の無能さを晒しあげ、ロンドン市民の世論を味方にする物語を作り出す事だった。

ジョージ・エルダジが完全完璧に無罪だという主張だ。


後日、コナン・ドイルはジョージ・エルダジに直接会えることになった。

そしてジョージの視力の悪さを発見した。ジョージの視力は昼間は眼鏡で矯正はできるが、夜間内での彼に行動は不可能だった。

なぜならジョージは重度の近視と乱視だったからだ。

しかも事件現場で、光があったという目撃情報は一切なかった事で、犯行は暗闇の中で行われた事は確実だった。

この状況の中で、ジョージ・エダルジには実行犯として家畜を襲撃するのはムリな話だった。


僕が警察内部で得た証言との食い違いも、コナン・ドイルに指摘できなかった。誓約書のせいで。


コナン・ドイルは、この事実をロンドン市民や村の住民に強調した。

公安は無能であり、筆跡鑑定やジョージ・エダルジへの捜査方法と、本来隠しておくべきの必要があった警察関係者の仕組みを、世間にぶちまけた。


これに賛同した人たちは、こぞってジョージ・エダルジの無罪となる情報を集め出した。特に観光もない村のヒマ人たちだ。公安から情報をもらえなかったコナン・ドイルは、これらの情報に飛びつくしかなかった。真犯人となる容疑者たちの話など。


情報は想像してた通り、めちゃくちゃだった。村のヒマ人たちが、相手にされない連中が、こぞって自分たちの話をしにきた。


ーーそして僕は、彼らのくだらない物語を、ホームズの名を名乗りながらただの書記として書き留める羽目になった。


僕はホームズだ。

それなのに、やらされたのは退屈な記録係だった。

思いつきの推理を、コナン・ドイルから得意げに聞かされる記録するだけの男だ。


世間の声は日に日に大きくなる。

コナン・ドイルの正義だけの叫びは、

ロンドン市民の心をめった刺しにした。彼らは熱を持った。

現場の警察は熱を失っていった。


世間の声は日に日に大きくなった。

コナン・ドイルの“正義の叫び”は、ロンドン市民の心をめった刺しにし、彼らに熱を与えた。

その反比例で、現場の警察はどんどん熱を失っていった。


ある日、キャンベル刑事が、宣告文を読むような声音で言った。


「ホームズ。蜘蛛の糸は切れた。

先はない。……もう捜査は許されん。

ジョージ・エダルジを、この事件の犯人として扱わなきゃならないーー」


僕はキャンベル刑事を見た。

その目の奥に、僕が言いかけていた敗北がすでに沈んでいた。


「……僕らは負けたんだ。

蜘蛛に、そしてコナン・ドイルに。」


キャンベル刑事は舌打ちしそうな顔で、しかしどこか僕を気遣って言った。


「おい、ホームズ。もう警察官になれ。推薦してやる。

お前、あんなクソジジイのそばにいたら、不幸になるだけだ」


僕は静かに首を振った。


「警察はーー推理する男を許さない。

キャンベル刑事、あなた方がほしいのは、僕の“物語を作る力”だ。

決めつけて、もっともらしい筋書きを書き出し、事件に“解決”という名前を貼る力だ。

……それじゃ、僕の知性は磨かれない」


キャンベル刑事は、まるで自分が殴られたような顔をした。

悲しみだ。

僕の言葉が、彼の中の“現場のプライド”を痛めたのだろう。


それから僕は、コナン・ドイルとともにサリー州ハインドヘッドの屋敷へ戻った。

ここからが、本格的な執筆作業の始まりだった。

僕は探偵ではなく、ただの付き人へと成り下がった。


そこへ帽子ホームズが様子を見に来た。

僕は彼に、シャーロキアンの中にモリアーティの影が潜んでいることを告げた。


「まさかーーそりゃ喜ばしい。

ボクらがモリアーティの連中を打ち負かす日が来たってわけだ。

いやあ、退屈な現実よ、おさらば!

シャーロキアンのホームズが力を合わせて事件を解決する!

……本格的にワトソンを募集しなきゃな」


彼は軽口を叩いた。

彼にとっては“ごっこ遊び”の延長でしかなかった。

家畜たちの末路など、彼の想像の外側だった。


ある日のことだ。

コナン・ドイルの興味が、グレイト・ワーリーから別の事件へとあっさり向けられた。

彼は飽きたのだ。

踏みつけたオモチャが動かなくなると、次のオモチャを欲しがるーー

それが彼の天才性の、もっとも冷酷な部分だった。


この繰り返しが、僕らの未来だった。

蜘蛛の影には、もう届かない。


僕は、その男のそばに立っていた。

見捨てることも、追いつくこともできずに。


(こうして、第十六幕は、付き人としての僕で幕を閉じる。)

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