表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シャーロキアンのホームズⅡ〜名探偵になりたい男の物語〜  作者: 語り部ファウスト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/17

第十五幕:崩壊への序曲

やあ、君。僕はホームズだ。そして、ホームズを愛するシャーロキアンの一人だ。

なのにーーシャーロック・ホームズと名乗っている。


第十四幕では、コナン・ドイルに事件のあらましを伝えた。僕は誓約書にサインをしたから、内容は限定的だったけど、彼には充分すぎた。


牧師館のダイニングルームで、コナン・ドイルが叫んだ。

「手紙だ。手紙はーー筆跡がわかる!ーーそうだ、マヌケ!手紙はどうした?ーー筆跡は調べたのか?」とコナン・ドイルが跳ねた。

パンクズがテーブルの床に落ちた。

「す、すみません、先生ーーひ、筆跡はーー調べて、ませんーー」

僕は怯えてみせた。

「マヌケ!筆跡は変えようとしても、必ずボロが出るんだーー!」と唸るようにしてコナン・ドイルは僕を罵った。


「いいか、ホームズ!筆跡鑑定だよーー!ははーーそうだ」とコナン・ドイルは下唇を噛んだ。

彼は突然、呟いた。

「名前を聞けばよかったーーあの無礼な警察官のーー」

僕の意識に反して、思わずこう応えた。

「ーーも、もしかして、ジョージ・オーガスタス・アンソン大佐のことですか?」軽率な自分の口の軽さを呪った。

コナン・ドイルは、僕に顔を向けた。

「なぜ、ヤツの名前を、お前なんかが知ってるんだ?」と警戒した声で、コナン・ドイルは僕に詰問した。

「せ、先生がお休みになっている時に、偶然に、あってーー」とごまかそうとした。もし彼の知性が答えを教えたらと思うと、生きた心地がしない。

彼は僕を裏切り者だと糾弾し、この村で僕の尻を蹴飛ばすんだ。

だけど、彼の反応は僕の想像したものとは違った。

「ーーなんだーーあの男は、私の助言が聞きたかったんだ。やはり探偵の目がなければ事件解決は難しいんだろーー」とコナン・ドイルは喜んだ。

その様子を見て、僕は苦笑した。

彼の知性は働いてなかったのを、確認できたからだ。

「アンソン大佐に、筆跡鑑定を依頼しなきゃいけないな。すぐにーー!」

コナン・ドイルは立ち上がった。

彼は僕に指示をだした。

「ホームズ。ジョージ・エダルジとなんとか話をしたい。彼と話ができるように手続きしてくれ。彼が本当に犯人か、この目で見極めてやる。探偵の目だ!」

「さ、さすがです。せ、先生。

探偵の目は、そんな事も、で、できるんですね?」

「もちろんだよ、君。まあ、ホームズには難しいだろう。私だけの共感力だーー」


そんな再現性のない能力、

あってたまるもんか。


スタッフォードシャー警察署にて、アーサーが再び通された部屋は、暖炉のない取り調べ室だった。

今度は僕も取り調べ室の中にいて、コナン・ドイルと共に話を聞くことになった。

なぜかって?

このグレート・ワーリー事件を詳しく調べたのは僕だから。コナン・ドイルは体調を崩していただけだったから。

「アンソン大佐。この事件は難解です。ですが、ご安心ください。公安の目に、探偵の目さえあれば、真実は明らかになるでしょうーー約束します」

コナン・ドイルは静かに微笑んでみせた。


アンソン大佐は深くため息をついた。

彼は僕を見た。失望の眼差し。

「彼はーーなぜついてきたんだ?」

僕は、答えず視線を下に向けた。

「彼は私の助手です。記録係みたいなもんです」とコナン・ドイルは僕がいる理由を話してた。

「ーーなるほど。

ーーで、ドイルさんは何を思いついたんでしょうかね。

失礼ですが、我々の立場として何も言えません。

そこはご理解ください。」


コナン・ドイルはーーうなづいた。

「ふふふ、筆跡鑑定ですよ。アンソンくん。

犯人は重大なミスをせざるおえなかった。ーー匿名の手紙を出したことです。

この手紙はジョージ・エダルジをギャングのリーダーとして貶めています。

だが根拠のないデタラメーー私はそう睨んでます。この手紙を書いた犯人を見つければ、おのずと事件の謎は世間であきらかになるでしょうーー」

アーサーは、そういうとアンソン大佐を見た。アンソン大佐は静かに答えた。でなきゃ、彼はアーサーをーーやめとこう。彼は紳士だ。そして、警察官だった。

「なるほど。我々に筆跡鑑定をしてみろ、ーーと。ドイルさんは、この村の誰の筆跡を鑑定させたいので?

我々が怪しいとにらんでる相手の筆跡を一人ずつ調べて、鑑定人に調べさせろーーというつもりでしょうか?」

アンソン大佐は続けて言った。

「匿名の手紙を書いた人物が、事件に直接関係していると、なぜ決めつけているんですか?便乗しただけの、それだけかもしれないーーそうですね?

筆跡鑑定もタダではありません。

捜査するにしても、限界があるんです」


コナン・ドイルの鼻息が荒くなった。

「君、怠慢だぞ!筆跡鑑定をするものがいないんだ。そうだろ?」と言った。

「我々には、筆跡鑑定人に頼む仕組みはある。だが、ドイルさんに詳しく説明する義務はない。手紙を誰にまわすかも、捜査をする上での重大な秘密です」とアンソン大佐は拳を強く握った。

「ご協力ありがとうございます。

ドイルさん。他に何か、必要なことは?」

「ジョージ・エダルジとの面会をさせてもらいたい」

「わかりました。ホームズに手続きを進めてもらいます」とアンソン大佐は疲れたように僕を見た。それから呟くように言った。

「ーードイルさん。あなたの新作は私にも分かりました。きっと、あなたは我々を無能だと書きたてるでしょう。

物語としてね。

ロンドンでの世論も、もしかしたら歴史ですら我々を無能集団と断じるかもしれません。

だがーー覚えてください。

我々には法のシステムがあるんです。

それを無能と即断するのは、

我々だけでなく、国すらも無能としてるのです。ーーそこに国への敬意はない。結果だけを判断した浅はかさは、人を煽動させる危険なものなのですーー」

アンソン大佐は冷ややかに説明したが、コナン・ドイルの頭の中では何かが生まれていた。

僕は、寒気を感じた。薄気味悪かった。


(こうして、第十五幕は迷惑探偵により幕を閉じる。)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ