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気の向くままの異世界旅  作者: 方夜虹縷
第三章

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第13話 別行動

「あの受付嬢、あの質問の時だけ表情が抜け落ちてた。まるでゴーレムみたいだった。」


ギルドを出て少し歩いたところで咲穂が言った。


「俺もあの瞬間だけ貼り付けた顔が無くなっていたのを見た。接客業特有の外向きが消えた、その原因が間違いなくこれだな。」


俺は収納から緑の宝石を取り出した。例の冒険者どもが落としていったものだ。

辺りに人がいないため、軽く光に翳しながら言った。


「あの受付嬢はこれについて何か知っている。おそらくだがあの受付嬢一人だけでなくギルドが関わっているだろう。つまりあの受付嬢と冒険者はグル。この町の様子とかあの闘技場の件とどれだけ関係があるかは現時点では不明と。めんどくさくなってきたな」


「ん。でももともとの予定は変えなくてよさそう。どのみちここの調査は情報収集を兼ねてするつもりだった。運よく見つけれたらいいものが増えただけ。一石二鳥」


咲穂が無表情のまま告げた。確かに、その通りだ。状況はめんどくさくなったとは言え、俺たちの行動に何か影響があるかと言われればそうではない。追加での潜入や討伐は必要ない。むしろ許容範囲が広くなったのだ。無駄足を踏む確率が低くなったとすれば、大したことはない。


……という言い訳は置いておいて。ぶっちゃけ面倒なものは面倒だ。この宝石云々のことで許容範囲が広くなった?まさか。確かに効率という面のみで言えばそうだが、この件に俺が興味あるかという主観が入った瞬間、そんなちっぽけな利点は吹き飛ぶ。俺がこの旅に、咲穂に同行しているのは飽くまでこいつとその行く末に興味があるのであって、雑用トラブルその他面倒事を引き受けるためではない。


俺はまず個人主義だ。他人?知ったことか。どんなときでも現在過去未来の自分の利益が最大になるように動く。


このことを理解できている。自分でそう認識できている。故に面倒だ。ここで咲穂、もとい偵察に協力することが、咲穂の成長、つまり俺の益につながる。よって俺は協力するのが最善だ、と。


俺は宝石をしまい、溜息を吐きながら言った。


「そうだな。予定の変更は無し。事前の打ち合わせ通り、個別に動くぞ。終わり次第宿に集合だ」


咲穂が頷き、俺たちは別れた。













咲穂と別行動を初めて数時間。俺は宿に帰ってきていた。窓から町の様子を見ながら考えを巡らす。窓からはすでに夕日が差し込んでいて、町からは徐々に酒盛りの騒ぐ声が大きくなっていっている。町のど真ん中に闘技場があるぐらいだ。町の特色も冒険者や戦闘職の性格に近いものになっているのだろう。

俺が部屋に戻ってきた時、部屋は出て言った時と変わっていなかった。つまり咲穂はまだ一度も戻っていない。


すると部屋のドアが開き、咲穂が帰ってきた。この部屋に入ってる来るのは俺以外に一人なので見るまでもなく確定である。

思考を打ち切り、情報共有の為振り向きながらイスを勧めようとして、思わず動きを止めた。


「……なんだ、それは?」


パッと見、咲穂に外傷はなく魔法にかかった様子もない。いたって健康体である。ではなぜ、動きを止めざるを得なかったか?

それは咲穂の恰好にある。服装自体は別れたときと変わっていないが、両手に肉串を数本ずつ持ち、さらに指の隙間にアクセサリーのようなものを挟んでいる。いくつか持っていて、そのほとんどが三角形のような飾りだ。


「……すること終わって帰る途中にうっかり、買っちゃった。おいしそうで。動かせないから持ってほしい」


咲穂が言った。俺は呆れて肉串を受け取った。


「だからと言ってそんな大量に買い込むか?収納のなかにもお前の手持ちにも食料はあるだろう」


「それとこれは別。腹が減っては、とも言う。たからこれは必要なこと」


「はあ。だとしても、その三角形はなんだ。」


よくみると飾りはほとんど三角形だが、それぞれ種類が異なり、ネックレスやピアス、ブレスレットにアンクレットもある。

咲穂がそれらを掲げながら言う。


「これは食べ物買ってたら町の人がくれた。有名な幸運のお守りらしい」


「肉串を買っただけで大量にくれるほどのお守り?そこまで広まっているのか。」


ひとまず大量のお守りは咲穂が自分のカバンに仕舞い、俺たちはイスに腰かけた。


「さて。どうだった?」


俺は目の前の咲穂に問いかけた。咲穂は肉串を順に食べ始める。余った串は俺が収納から出した皿に置いている。

咲穂は咀嚼していた肉をゴクリと吞みこんで言った。


「大収穫。経緯はだいたい分かった。この町が、ちょっとおかしいことも」


「この町の根となる情報は互いに手に入れたようだな。正直、俺は今回の件に興味がほぼゼロだったが、それでも今回は驚いた」







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