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気の向くままの異世界旅  作者: 方夜虹縷
第三章

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第11話 疑念

「咲穂、先に宿をとろう。いろいろ調べるのはその後だ」


「分かった」


どうもきな臭くなってきたことを怪しく、ぶっちゃけめんどくさく感じながら、ひとまず泊る場所を確保すべく咲穂に声をかけた。時間は余裕あるが、この町でしばらく活動する以上荷物置きとなる場所はとっておきたい。

さっきの騒ぎで咲穂も想定より長くなりそうであると思ったのだろう。すぐに同意してきた。宿を取った後は情報収集から始めることになる。あの騒ぎの裏にあるものも含めて。

と言うのが咲穂の考えだろう。俺はそれに加えてこの世界の情報も集めなくてはならない。基本的な時間の刻み方などか聞いたが、それ以外の情報は全くだ。この辺りの成り立ち、大規模な戦争、作物や飢饉等、欲しい情報はいくらでもある。理想を言えば、この国だけでなく周辺国も含めた歴史書があればいいが。


俺と咲穂は試合後も未だ盛り上がる群衆の間をぬけ、通りの方向へ歩いていく。群衆は俺たちが来る前よりも、一目で分かるほど多くなっている。そのほとんどは薄手で質素な布一枚を上下で着た住民のようだ。しかし一部は上質な布でできた服を着た他の町の商人や、鎧と武器を纏った人間もいる。


闘技場を離れ、そこそこ大きな通りを進んでいく。途中、露店で食料などを補充し、ついでに宿の場所を聞いた。この通りは露店はあるものの人間はほとんどいない。おそらく娯楽を求めて行っているのだろう。


少し歩いて宿に着いた。いかにも安宿と言う見た目で、外見は年季の入ったような汚れが目立ち中もさほど綺麗ではないが、これでもこの町ではかなり上質なほうで、ここより上となると貴族御用達のところしかないらしい。この町での非特権階級の生活基準が見えてきたな。


部屋は一室でベッドが二つある部屋をとった。二部屋にしようとしたが、咲穂に猛反発され一部屋にせざるを得なかった。前の世界の通貨ならいくらでも持っているが、そもそも俺はこの世界に来たばかりでこの世界のお金を持っているわけがない。支払いを咲穂に任せるしかないのだ。つまり、俺に反対する権利なんぞない。

咲穂が硬貨を取り出し、支払いを済ませる様子を見た。やはり俺が持っているものとは違っていた。変に固辞せず正解だった。だが店主と咲穂の会話を聞いていると、単位はエスのようだ。何か関連性はあるのだろうか。


渡されたカギをもとに指定された部屋に入る。中はベッドが二つ、小さめのテーブルとイスがあるだけで凝った装飾はない。床は板材そのままで壁は単色である。


「さて、これからどうする?」


部屋に入って手荷物を置いた咲穂に問いかけた。俺は荷物は収納の中で、咲穂のは布袋一つ分のみ。俺と会うまで食料は必要最低限の量しか買わずちょくちょく買い足していたらしいが、今は全て収納の中に入っている。咲穂は研鑽目的で旅をしているため嗜好品や化粧品は一切ない。そのため袋の中身は替えの服が2セットだけ。

俺も咲穂も普段から自由に動けるのだ。宿の部屋に荷物をおいた今さらに細かく、即ち隠密行動がより可能になる。

咲穂はひとつ頷いて言った。


「まずはいろいろ調べることがある。さっきの騒動の経緯と最近の動向、その裏にあるもの」


「異論ない。それじゃあ、別々に動いて、時間になったら集合でいいか?」


この世界に針と盤がある時計は見かけていない。以前咲穂に聞いたところ、どの町でも鐘の回数で時刻を知らせるらしい。鐘には他にも役割があるらしい。


「うん。そうするのがいいと思う。でも、その前に令はギルドに登録しておいた方がいい」


「ギルド?そういえばそんなことを言いかけてたな」


ちょうど金属のぶつかる音が聞こえる前だ。あの時は流れでスルーしていたが、よくよく考えれば重要な手がかりだ。

さっき闘技場の周りにいた奴らの恰好からすればおそらく……


「ギルドの意味は分かるが、具体的にはなんのだ?」


「正式名称は規定冒険者連合。通称冒険者ギルド、または単にギルド。ギルドに登録しておけばいろんな依頼が受けられて、お金を稼げる」


やはり冒険者ギルドか。元の世界とほぼ同じ仕組みのようだな。


「依頼は基本魔物討伐か素材採集。でもそのなかに、偶にだけど他の部類のが混じる。うち一つに様々な情報に触れられるものがある。それ以外にも報酬として情報が用意されてることもあるから、登録しておいたらいい」


「そうだな。なら店主に場所を聞いて、ギルドに行こう。そこで用が終わり次第別行動でいいか?」


咲穂がコクリと頷き刀だけを持った。他の荷物は置いていき、荷物になることを防ぐのだろう。


店主にギルドの場所を聞き、教えられた場所に向かう。宿からさほど離れていないようで、すぐに着いた。







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