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気の向くままの異世界旅  作者: 方夜虹縷
第三章

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第10話 武の裏

「……なあ咲穂。特徴が無いとは、いったい何なんだろうな。」


「……さぁ?」


咲穂は手本のようにに首を傾げてみせた。

ちょうどいいからと、来てみた結果が、これである。

……まぁ、俺もかなりの気分屋である自覚はあるからコイツのことは言えないわけだが。


咲穂と町に入って聞こえてきた音の方へ来てみると、そこには明らかに咲穂の説明に矛盾する光景があった。


穴のあいた入り口から数回曲がったりして着いた町の広場のようなひらけた場所。最も外側に円環状で店が並んでおり、その内側に更に円形で地面が、台が作られていた。辺りより一メートルほど高く、人間が動き回るのに十分な広さがある。


その台の周りを数十人の人間が取り囲み、台の上で動き回る人間を見ている。時折歓声をあげたり手を突き上げたりと、随分と盛り上がっているようだ。

台の上の人間は2人。一方は剣、もう一方は槍を持ち、激しくそれらをぶつけ合っている。


そう。紛う事なき闘技場、いや闘技所である。

周りの観客の声に押しつぶされず聞こえるように咲穂に言った。


「なぜこんなオープンな闘技所が?お前、知ってたのか?」


「ううん。私もここで見て初めて知った。」


咲穂も知らなかったらしい。だが咲穂は、この町に特徴はないと聞いたはずだ。その聞いた人間が嘘をついたのか。またはその人間も又聞きだったのか。


俺は近くで観戦していた中年女性に声をかけ、咲穂が聞いたことを話した。


「あぁ、それは多分この町の住民だねぇ。ここの住民はこれに慣れっこだから。これか普通なんだよ。」


「慣れっこ?昔から続いているのか?」


「そうだよ。2つ前の領主様がね、領軍と衛兵を鍛えるために、その腕を領民の前で競わせたのが始まりなのよ。今は誰でも参加できるのよ。」


「参加?」


そう聞くと女性は指を指した。ちょうど、入り口と反対方向だ。


「ほら、あそこにお屋敷が見えるでしょう?あそこが領主様のお宅で、ここが見えるようになってるのよ。ここの試合は2つあって、一つは誰でも相手を指名して戦える、騎士様の決闘のようなものね。決闘ほど仰々しくはないのがほとんどだけど、たまに財産とかをかける人がいるわ。もう一つが領軍か衛兵が出て来て相手を募集するの。兵士もそれ以外も、ここで腕を示して領主様に登用してもらおう、てこと。」


なるほど。その先々代の領主は兵士を鍛えるため、今はどちらかと言うと領主が人材を集めるために使われているのか。咲穂と話を聞いた人間が嘘を吐いていないことは分かった。しかし……。


俺は女性との話中、やはり視線と体が重なるように隠れていた咲穂に声をかけた。


「おい。今の話、聞いてたな?気づいたか?」


「うん。先々代が鍛えるために始めたのだとしたら、あの入り口は違和感がある。」


隠れる必要がなくなったため俺の横に戻り、台の試合を見ながら咲穂が言った。


「兵士を鍛えるのはいざというときに備えるため、もしくは明らかな脅威に対処するため。例えばどこかの国が宣戦してきたとか。つまり、何らかの敵対要因があるはず。でもあの入り口は防衛という意味で全く適していない。今はその脅威が取り除かれたと考えることもできるけど、一切ないなら武力で登用しなくていい。」


「だが、領主は武力を求めている。昔の歴史としてならともかく今もだ。ということは、武力は必要だが、それは外ではない。」


「うん。この辺りは国境どころか中心に近いし、魔物が多くいる森とか草原とか洞窟もなかったはず。それに、見て。」


咲穂が試合中の2人を指さした。剣を持ったほうは軽装で、動きもぎこちない。対して槍を持ったほうは金属鎧でそれなりにパターン化された動きをしている。おそらく兵士が相手を募り戦うタイプだろう。試合は兵士に優勢のようだ。あと少し続ければ兵士が勝つだろう。

咲穂が続けて言った。


「あの兵士っぽいほう、顔は見えないけどどこか焦ってるというか、追い詰められてる気がする。まるで、戦争を強いられて仕方なく敵を殺す農民みたい。」


確かに、軽装のほうは軽い心持ちのようで、周りからも茶化すような声が聞こえ、それに返している。しかし兵士は攻撃を繰り出すとすぐに追撃を仕掛けている。誰とも話す様子はなく、軽装の会話にも応じていない。


「あ」


咲穂が呟いた。試合が終わったのだ。兵士が槍を首元にあて、軽装が降参した。それぞれ台をおり、軽装は仲間らしき人間のもとへ。負けたが和気あいあいとしている。兵士も同僚のもとへ。こちらは台から少し離れた建物のすぐ側で見ていたようだ。

兵士は試合中とは打って変わって喜びを露わにし、同僚も自分の事のように喜んでいるのが分かる。


「……流石に喜びすぎ。普通の、戦闘が仕事の人間が格下を下したにしては異常。」


「そうだな。ああなるくらいの何かがあるんだろう。例えば何かから解放された、とかな。」


いづれにせよこの町に何かあるのは確定だ。咲穂が言うにはこの町周辺に脅威はない、地形的には平穏な町。武を娯楽とする住民に、おかしな兵士。

さて。













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