第6話 提携
その後も咲穂から様々なことを聞き出した。咲穂も喋ることは嫌いではないようで、話がスムーズに進んだ。
この星でも1年や1日といった考えは存在すること。1年は365日であることなどその他数値や単位の計算も俺が知っているものと同じであること。
これで一つ進展。突如出現したこの星について確証はないが、ここまで一致するのであれば、認めざるを得ないだろう。
この星は俺がいた世界と何らかの関わりがある。
とはいえ、今断言に近い形で言えるのはこれだけだ。他はさっぱり。
今俺たちは、あの森から出て街道沿いをずっと進んでいる。体感では数時間は経過したはずだ。
気になって咲穂に聞いてみた。
「なぁ、あの森から町まではどの程度離れているんだ?日没までに着くのか?」
俺は日が沈もうと関係ないが、咲穂はそうはいかないだろう。たぶん。昨夜のことがあるからおそらく。
「問題ない。もうすぐ着くはず。」
咲穂は言った。そうか。ならいいんだが。
すると咲穂が言った直後立ち止まった。そして手をかざして制してくる。
「止まって。何かいる。」
祖に声で前をみると、確かに熊型の何かがいる。魔物だろう。
……一応、聞いておくか。ここに似通った特徴があるとはいえ、全て同じとは断言できない。
「あれは?」
「セルフィーダー。見ての通り熊型の魔物。一般では強敵らしい。」
やっぱりあれの呼び方は魔物で合ってるのか。名前からして隅々まで食べ残しがないように食べそうな魔物だ。セル細胞、フィーダー餌を消費するものだし。
すると、咲穂が前に出て言った。
「私がやる。あなたはそこで見ていて。」
「なぜだ?」
「これからの仲間に実力を見せておくため。」
「昨日散々殺しあったはずだが。」
「あれはあくまで互いを敵として戦ったに過ぎない。仲間として、これから先協力することもあるはず。なら、そのために把握しておくべきものがある。」
「なるほどな。確かに連携をとるなら損はないか。ところでさっき、あの熊が一般に強敵と言ったが、まさか遅れは取らないだろうな?」
そう言うと、咲穂が刀を抜きながらこっちを見て言った
「当然。舐めないで。そんなことはあなたがよく分かっているはず。」
そして咲穂は熊と向き合い、ゆっくりと歩を進めていく。熊のほうは近づいてくる咲穂を餌とみなしたのか、唸り声をあげて突進してくる。
段々と距離は小さくなり、ぶつかる、瞬間に咲穂が横にずれ、すれ違った。
そのまま三歩ほど歩いたところで、熊の首が落ちた。
「おおー。」
感心して、刀を納めている咲穂に向けて言った。
「滑らかな剣筋だな。そのへんの実力がどの程度なのかは知らないが、予想としてほとんどは刀が動いたことに違和感すら覚えられないんじゃないか?」
熊に近づいて断面を見た。熊の毛がほとんど荒れていないし、首と刀がほぼ垂直にはいり、途中で引っかかって曲がったりもしていない。
咲穂が近づいてきた。
「賞賛感謝する。今のは『時雨式 凪』。静の状態から動の敵を切るのに使う。」
「その時雨式ってのは?」
「時雨式は私が……私の家に伝わる刀術。実戦を基に興されたと言われていて、実際様々な場面に対応できる。」
「へぇ。すごいな。」
そう話していると、血につられたのかもう一匹熊がやってきた。
それを見て俺は言った。
「次は俺の番か。」
「そういうこと。」
「とは言っても、さほど面白いものは無いぞ。すぐ終わるしな。」
腕を伸ばし熊に向かって振り下ろす動作をした。すぐに熊の脳天から足まで真っ二つに分かれた。
「それは、魔法?」
「ああ。あまり言いふらさないでくれよ。空間魔法と言うものだ。」
「魔法……。何をしたのか分からなかった。」
「ん?魔法を使ったこともか?」
「うん。」
それは……。やはり魔力を知覚できていないようだな。あの時も無意識に切っていたようだ。だが、それは惜しい。
……そうだ。
「時雨。一つ提案だ。」
「何?」
「俺に時雨式を教えてみないか?」
「……なぜ?」
「お前は魔力を認識できていない。だが、無意識には近くしているようだ。それは昨日の戦いが示している。俺が使った空間の杭を引っこ抜いていたからな。で、意識して使えるようにするために、まずは言語化することを覚えてもらおうと思ってな。」
「言語化?」
「ああ。お前、今まで人に教えたり説明した経験が無いんじゃないか?そのせいで、自分ができることをうまく言葉に、そして論理だてられていない。故に魔力が扱えない、と考えたわけだ。魔力の扱いは俺が教えられるが、論理を使うからその辺の解釈に慣れてもらう必要がある。そこで、言語化必須な教えることという訳だ。安心しろ、俺は一応刀も扱える。確か……ほらあった。」
収納から刀を取り出して見せた。
時雨が、あまり変化はないが、驚いたような表情で言った。
「……それも魔法?」
「ああ。空間属性の一種だ。なんでも仕舞って置ける。」
「……レイはすごいね。分かった。よろしく。」
「こちらこそ、頼む。」
こうして、俺は道中刀の教えを受けることになった。




