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気の向くままの異世界旅  作者: 方夜虹縷
第三章

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第3話 癖

女がさらに攻撃を仕掛けようと駆け出してくる。その瞬間、俺は魔力弾を放った。属性を込めないただの魔力の塊だ。それを数発、女が走るスピードよりも早く飛ばした。


女はそれを視認し、止まってから刀で切って見せた。動体視力も良いようだ。状況判断力もなかなか。得体の知れないものに対し、そのまま突っ込まず立ち止まり、落ち着いて対処している。


女が走り出した。俺はさらに魔力弾を数発放つ。今度はちょっと仕込みアリで。


女はまたも切り伏せて見せた。しかし、今度は立ち止まらない。切ってみて問題無いと思ったのだろう。どうやら多少断定癖があるようだ。


突如、女の体がくの字に曲がり湖の方へ吹き飛ばされた。大したダメージてはなかったのだろう。空中で持ち直し、湖の手前に着地した。

女は腰をかなり落とし、刀を構えている。何をされたか分かっていないようだ。なにせ女からすれば攻撃は全て切り伏せたはずにも関わらず、攻撃を受けたような衝撃があったのだから。


タネは簡単だ。女の体を吹き飛ばしたのは単なるさっき飛ばした魔力弾と同一のものだ。但し、他の魔力弾を囮に、光属性魔法で不可視にしたものだが。


これではっきりした。女は魔力を感知していない。そうでなければ、隠した魔力弾を防げたはずだ。


さて。そろそろ終わりにするか。


未だ動こうとしない女に対し、魔力弾をさっきの数倍展開する。女は全て切り伏せていたが、さほど余裕があるという風ではなかった。そして魔力を感知出来ていない。単純な物量で制圧可能だろう。

そう思い、魔力弾を放った。無数の魔力弾が女に迫る。


しかし女は刀を脇に構えた。

切り伏せるつもりか?


魔力弾が女に当たる直前、女の声が聞こえた気がした。


「時雨式 蒼天」


女が脇の刀を斜めに一閃した。

次の瞬間、魔力弾が一つ残らず爆発した。


……へぇ。

原理不明。唯一確認できたことは魔力系の干渉は受けていないこと。つまり、魔力弾は物理的干渉によって破壊された。


たった一閃で。


女が再び駆け出した。


はっきり言おう。あの女の実力は、この星に他の人間がいるとしたら、群を抜いているだろう。


だが、それでも人間には限界がある。


女の体が走っている途中で急に静止した。その変化は慣性を無視している。そして磔にされたような形になると、空中へ上がっていった。


いくら刀術に優れていようとも、絶対の扱う魔法には抗えない。

今女は空間魔法によって両肘、両膝、そりて胸を固定されている状態だ。例えるなら、女の体と空間を見えない杭が貫いているようなもの。空間に縫い止めるだけなので痛みはない。


最初は急に襲いかかって来た為、殺そうかと思ったが、あの実力を見てしまえば興味が沸かない訳がない。

とは言え、あのままだと呼びかけても襲いかかって来ていただろう。

だからまずは、無理矢理にでも動かさないようにして


そのときだった。


カンカンという音が聞こえた。


音のしたほうを見ると女がなにやら動いていた。正確には女の右手首……刀を握っているほうの手首から先。そこを動かして刀を振り回している。


カンカン


まただ。だが、女は金属音が鳴るような行動は何も——————

そこでふと考えついたことがあった。


魔法とはイメージの体現。自分である現象について定義し、現実へ放つもの。この理論を使って、属性分けはともかく、俺は細かい魔法の名前は付けていない。その方が定義に囚われにくく、応用しやすいからだ。


そしてそれは空間魔法も例外ではない。


今、俺はあの魔法をなんと例えた?


『杭』


まさか、さっきから鳴っている金属音は———


ガツン。一回り重たい音が鳴った。

そして、女の右肘の杭が抜けた。


あの女、魔法を介さずを空間に干渉した!

一見無秩序に見えた手首の動きは杭に刀を引っ掛ける為……。

どうやった?あの女は魔力を感知出来ないはず……まさか、自分の体が動かないことを利用して?


女は動くようになった右腕を使って残りの杭も次々抜いていく。場所を間違えずに。


これは、やられた。素直に一本とられたと認めよう。


最後の一本を抜いた女は空中から落ちてくる。そして地面に着地すると同時に刀を構えこちらに駆けてきた。


それを俺はゆっくりと眺め……


女のスピードを上回る速度で回り込み、後ろから意識を刈り取った。


気絶して力が入らず倒れ込む女を支えながら、思ったことを口にした、いや口からでた。


「……最初からこうしとけば良かった。」


我ながら何をしているのだろう。未知の相手に対峙した時に、魔力障壁と魔法を使うこと、さらになんでも試そうとする悪い癖がついてしまっている。要改善である。


腕の中で意識を失っている女に目を向けた。落ち着いて様相を観察する暇がようやくできた。黒髪和服で刀を扱うといういかにもな人間で、所謂大和撫子という部類なのではなかろうか。


ここからはこの人間の意識が戻るのを待つしか無い。

その後、いろいろ聞くとしよう。


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